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エレキットTU-897 2A3シングル



2A3と300Bは、ほとんど同一回路構成で、TU-873には、同時発売の2A3使ったTU-872があるんだけれども、そのTU-872を入手することができなかった(当時)のと、同じようなキット(そもそもキットは好きでない)を2台組み立てる意欲がなかったので、中古のTU-897を入手しました。
ところが、これにはまって(以下参照)、最終的にキットを2台購入して、ピークには、3台保有していました。ここらへんの行動パターンは、「結果を出す」に書きました。
キットを購入したのは、回路図が見たかった(特に初段)からですが、実際届いたキットの回路図は、「なんでこうなの?」という、ぱっと見では、普通なようでよく分からないところがあって、組み立てて音を聞くと「凄い!」というものです。
大口径ウーファユニットを、300Lくらいな箱に入れたような、2A3らしい「柔らかい音」がします。小口径ユニットを音楽的に鳴らしてしまうのは、このアンプの得意とするところです。
TU-897は、4年くらい前のTU-873TU-872よりも高価な製品(その頃はまだ玉が高かった)で、ドライブ(3段)にミニチュア管を使っていて、見た目も音の傾向も違います。

tu897-1
初段6AQ8(1段)、ドライブ6FQ7(2段)という、今のパワーアンプと比較しても、強力なスイングの後に、2A3に入れています。LUXのA3700と同じ構成品ですが、作りはまったくのオリジナルです。
6FQ7だけでは良い音にならないんで、わざわざ高価かつ貴重な6AQ8を足したのだとおもいます。とにかく6AQ8のほうが2A3より高いんですから。
TU-898と同じ、電源がチョーク入力なのも、今となっては珍しいです。B電源とは別に、専用のヒータトランスに、B電源と同じトロイダルコアのトランスを使っているので、2A3アンプとしては、きわめて重い部類に入ります。
ちなみに、TU-897には、トランスが組み付け済の前期型と、トランスを自分で組み付ける後期型がありました。後期型は出力トランスが黒色塗装なので、すぐ区別がつきます。
では、電源だけで、「いくつ巻き線が出てるの?」といえば

  • 2A3ヒータ(別途外付け)
  • 2A3、6FQ7のB電源
  • 2A3、6FQ7のバイアス電源
  • 6AQ8のB電源
  • 6.3Vのヒータ
    という、自作では考えつかない数+6AQ8のEpは300V(終段より高い!)出てます。
    出力等の基本的なスペックが公表されていないのも、エレキットの中では、珍しいです。
    TU-897は、帰還(NFB)が深め(無帰還の組み立てもあったはず)で、出力が低く、300Bである、TU-873を聴いた後では、レンジが狭く暗い、いかにも古い真空管アンプという音がします。
    しかし、しばらく聴いていると、チェロとかスネアドラムとかの音が、くっきりと聞えてきて、それなりにすばらしいところがあります。

    1. 前から見たところ
    2. tu897-1
      ボリュームノブは小さく、回転も重いです。これは、パワーアンプだからです。
      正面パネル左にある鍵が電源です。

    3. 斜めから見たところ
    4. tu897-1
      定価でTU-872の倍はしたとおもうので、塗装の質が良いです。ソケットも放熱の穴のある、良さそうなものを使っています。

    5. 後ろからTU-897とTU-873を見比べる
    6. tu897-1
      手前(右)が、TU-897で、左(奥)がTU-873です。スピーカ端子は、バナナプラグが使えて、4Ωのタップが出ているTU-873がいいとおもいます。そのかわり、TU-897の入力端子は立派なものがついています。
      ACケーブルは、TU-897のほうが立派なのがついています。出力は2Wそこそこなんですが、一応パワーアンプらしく見せています。

    7. 前からTU-897とTU-873を見比べる
    8. tu897-1
      手前(左)が、TU-897で、右(奥)がTU-873です。ドライバがミニチュア管である。TU-897は、GT管であるTU-873よりも、見た目が小うるさいとおもいます。

    9. ソブテックのシングルプレートと交換
    10. sovtech
      CRと書かれた中国管の2A3は、雲母が煤けてきていたので、300Bそっくりなソブテック(ロシア管)に替えてみました。が、あまりかわりありませんでした。やはり、どこか(帰還かプレート電圧)に強い癖が出ているのだと思われます。



    肝心の音はどうかというと、300Bを300Bらしく鳴らしているTU-873と比べると、このTU-897は、そこまでは2A3を鳴らしていないとおもいます。もう少し帰還を浅くして、高いところ、低いところの特性の荒れを見せないと、2A3らしくないとおもいます。
    私個人としては、2A3で十分という考えですが、このTU-897だと2A3が古い真空管アンプのイメージそのもの(暗くて出力が小さい)なので、いまいちです。
    とはいえ、それは300BであるTU-873と比べているからであって、TU-897だけ聴いていれば、歪感もなく、ゆったりと鳴っていて、不満は無いはずです。
    あと、TU-873がバーンインの最中なのに対して、このTU-897は、リハビリ?といった、手を入れてもいい時期にあるので、気長に直していこうとおもいます。
    2A3の名前のとおり、今となっては珍しいヒータ電圧で、点灯するのに専用トランスが必要になる2A3ですが、今日まで存在し続けた理由が解明できるまで触れば、楽しめるとおもいます。
    アンプ(キット)としてどうかといえば、TU-873や、それと共通(基板が共通で、球が2A3)のTU-872とは、価格面で2倍、部品点数で1.5倍の量が、このTU-897には詰め込まれています。いわば、2A3専用に考えられた設計で、それは、2段というドライブに現れています。
    今風にみれば、ドライブがGT管のTU-873や、TU-872が、見た目良いですし、TU-872はFETをリップルフィルタに使った直流点灯です。そこを、本来2.5Vという低電圧(今となっては、それこそ障害)で実用上問題の無い交流点灯で済ますところ、プレート電流計による演出などが心憎いです。
    とはいえ、6B4G(=6A3)のキットというのは、聞かないですねぇ、、不思議です。

    配線直し、プレート電流調整。

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