4.2 Klausの家

  やっとの思いでKlausの家に辿り着いた。彼の家は小高い丘の頂上より少し下がったところで、ロケーション抜群である。海まで車で10分くらいらしいが、その海が見えるのだ。ここにアマチュア無線のアンテナを立てたら、さぞかし飛びがいいだろうなあ。
  Klausに招き入れられて、中に入っていった。玄関が右手にあったがそこからは入らずに、庭のほうへとおされた。ベランダの前にはプールがあり、その奥はちょっとした斜面だが、バドミントンができるくらいの庭がある。
  なんともすばらしい家だ。とにもかくにも荷物を降ろして、2階のゲストルームへ入ることにした。僕ら夫婦で一部屋、そして子供たちに一部屋ある。部屋には、僕らのためのタオルと石鹸が用意されていた。さらにチョコレートも置いてあった。わざわざ用意されたのかどうか分からないが、心憎いばかりのおもてなしだ。
  ここでKlausの家をざっと紹介しておくと、1階はリビングにキッチン、ダイニングに客間があり、それぞれの部屋は仕切られていない。よって、かなり広く感じられる。真冬の8月でも日中は半袖でも十分な気候だから、オープンになっていてもいいのだろう。
  そして2階は、KlausとCarmenの寝室に、次男の子供部屋、バスルームがあって、ゲストルームが2部屋ある。ここの2階の廊下には、コンピュータが置かれていて、高校生の次男の息子が一生懸命コンピュータゲームをやっていた。このコンピュータはKlausのコンピュータとネットワークで結ばれているとのこと。
  Klausは、いわゆるSOHOで、在宅勤務している。彼の仕事部屋は、玄関横ガレージの一角を仕切ったところだ。部屋は8畳くらいで長細いが、いろんな測定器や機械が所狭しと置いてある。Klausはコンピュータを2台持っている。1台はデスクトップに、もう1台はノートタイプだ。これらと子供のコンピュータがネットワークを形成している。
  Carmenはとてもきれい好きで、家の中はいつも片付いているのだが、ここだけは一切触らないとのこと。まるで我が家と同じだ。つまり、ものすごく汚いという事だ。

 一息ついて、プールサイドのテーブルでビールを飲みながら、Gold coastであった事やいろんなことを話した。子供たちには退屈するだろうと、ビデオを借りてきてくれた。といってもそれらはみな英語だが。でもその中のいくつかはディズニーのアニメで、家にもあるもだったから、おとなしく見ていた。


 2匹のうちの1匹、メスのMishka家の中はどこへでも自由だ。

  そうそう、もう二人、いや2匹の事を忘れていた。Klausの家には、2匹のミニチュアシュナウザーという犬を飼っているのだ。オスのMaxとメスのMishkaだ。MaxはMishkaの子供である。といっても体は彼女より大きいが。
  彼らはよく躾られていて、家の敷地内を自由に走り回っているが、トイレや寝床はちゃんとしている。それに比べたらうちの犬は。。。。
  いろいろおしゃべりしているうちに時間が過ぎ、少し薄暗くなってきたら、Carmenがオードブルを用意してくれたので、今度は2階のベランダで飲み食いする事となった。先でも書いたが、とにかく彼らは外で食事や飲む事が好きだ。
  遠くで消防車のサイレンのような音がする。Klausが、指を差して見てみろというので、立ち上がってみると、遠くで煙が上がり火が見える。これは火事かなとKlausに聞くと、多分火事ではなくサトウキビ畑を焼いているのだという。かなり遠くだが、広範囲に焼いているようだ。実は後日この光景を目の当たりにして見たのだ。
  2階のベランダでの、オードブルが終わって、今夜のディナーはステーキだという。Carmenが下ごしらえして、Klausが焼くのだ。焼くところはちゃんと家の裏にバーベキューするところが据え付けられている。食事の用意も見事な分業制だ。ほんと、これは見習いたいと思った。そして、片づけは息子の役割だ。
  Klausの焼いてくれたディナーを今度は家の中のダイニングで食べる。うまい。ビーフの回りにベーコンが巻いてある、なんて言う名前のステーキだろう。 まあ、久しぶりの再会だし、Carmenとも話しが合って、ほんと時間の経つのが早い。子供たちが眠たそうなので、2階に連れていって、シャワーも浴びずにそのまま寝かせつけた。

 子供を寝かしつけた後、4人で飲み直しだ。Klausが、今年の7月にドイツへ行ったときの写真を見せてくれた。彼と、Carmenの親戚回りをした旅だったとのこと。何と1ヶ月もかけて旅したそうだ。日本だと会社を辞めなければできない旅だ。
  その時の写真も見せてくれた。その中に、何か親戚中が集まって競うスポーツフェスティバルのようなことをするそうだ。何とその時、Klausの息子Kristenが優勝してしまったそうで、来年にはドイツの親戚をオーストラリアへ招待して、リターンマッチをするとか。また、その時には僕らも招待するかといわれたけど、夏休みや冬休みならいいけど、普通の日に休みを取って行けるかなあ。でも、行けるといいなあ。そうなったら、ちょっとした国際試合になるかも。
  午後11時、話しは尽きないが、明日からみんな仕事だし、子供は学校があるしで、そろそろ寝る事にした。2階のシャワーを使わしてもらい、ベッドに入った。電気を切って、天井を見たらびっくり、まるで満天の星を眺めているようだ。どういうことかというと、天井に蛍光塗料の星がちりばめてあったのだ。
  自分自身、外国人の家におよばれした事は何回かあるが、とにかく泊まるのは初めてである。ましてやオカミサンなどは言葉も通じないし、僕がいなくなったらどうしようと不安になるだろう。それでも、僕の前ではあまり弱気な発言が無かったのには、僕自身ちょっと見直してしまった。
  僕もちょくちょく出張で、日本以外のところへいろいろ行ったけど、一般常識的な人間の行動や行儀作法に、外国人だから、とか、日本人だからとかいうほど違いはないと思う。朝起きたら「おはよう」というし、親切にしてもらったら「ありがとう」ていうのは、万国共通だ。まあ、ハングルのように、「アンニョンハセヨ」というあいさつは朝昼晩いつでも使うことができるという違いはあるが、あいさつの言葉という事でなら、同じである。 こんなこと考えながら、オーストラリア第4日目の夜は更けていった。

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