4 サンシャインコースト(Buderim・バドリム)

4.1 Klausの家を目指して

 午前11時、これから、Klausの家に行くのだ。彼の家に行くのは初めてである。彼とは、仕事上の付き合いから始まった仲だが、今ではすっかり公私共々友達である。付き合いは、僕が今の職場に異動になって以来だから、この8月で3年と8ヶ月になる。その間にオーストラリアへ出張したり、彼が日本へ来たりしたときは、たいてい一緒に行動する。 彼について簡単に説明しておくと、僕の勤め先の取引き先で、製品開発部門のマネージャーである。いわゆる技術屋さんで、僕とも話しが合う。また、VK4KKDというアマチュア無線のコールサインも持っており、出張のときなどアマチュアのトランシーバーを持ってきたりしていた。
  そして2〜3年前だったかに、出張したおりに、オーストラリアのパケット通信(アマチュア無線を使ったパソコン通信)を見せてもらった。当時からすでにオーストラリアではインターネットに接続されており、パケットで、ドイツの人とチャットするところを見せてもらった。今は彼も僕らと同じくインターネットに傾いているようで、自宅ではTNCの電源も入れていないようだ。

 KlausはここGold Coastと同じQueenslandのBudrimに住んでいる。場所は、ブリスベンの北約100kmのところにあるSunshine coastだ。何とも明るい土地の名前じゃないか。いつも太陽がさんさんと輝く、オーストラリア人なら誰でもが住んでみたいところだそうだ。
  Sunshine coastまでは、ブリスベンからGold coastに来るときに使ったPacific Highwayを北上し、途中からBruce Highwayに変わる。Klausに借りた道路地図もある。多分大丈夫だろう。

 Pacific Highwayは、来たときと同じく車の量も少なく快適だ。とにかくBrisbaneまではBrisbaneの看板を見ながら走る。そして、3日前と同じGateway bridgeを渡る。今度は間違いなく、AUD$2.-コインをほおり込む列に並んだ。珍しいのか、僕が投げ込むところをオカミサンが写真に撮った。
  このgateway bridgeの一番高いあたりから、右前方にBrisbane airportがよく見える。回りに何も無いところに、滑走路が見える。日本では見られない風景だ。近くに見えるようで、かなり遠いだろうということは、ちょうど着陸するために僕らのすぐ頭の上を通りすぎた飛行機の大きさで想像がついた。

 Gateway bridgeを過ぎ、空港の横を過ぎたあたりから回りの風景が少しづつ変わってきた。Gold coastまでの道沿いは、ぽつんぽつんとインターごとにガソリンスタンドがあり、マクドナルドがあったりして町らしいところを通り過ぎたのだが、ここらあたりから、回りはほとんど林の中を走っている感じで、町がない。というか、家があまり見えないのである。だんだんいなかへ行くんだなあ、という感じがしてきた。


 展望台からグラスハウスマウンテンを眺める。とにかく回りに何も無いので、かなり遠くまで見渡せる。

  Brisbaneを過ぎて30分くらい走ると、左手にGlass house mountainが見えてきた。平野の中にぽこん、ぽこんと不思議な形をした山が見えてきたのだ。資料によると、その昔、キャプテンクックがオーストラリアを探検したときに、故郷の山に似ているとかで命名したものらしい。変わった形なのでカメラに収めたいところだが、走行しながらだと、林が邪魔したりしてうまく撮れない。ちょうどこのあたりも回りに家も無くゆるい起伏があるだけだが、右手に小高い山が見えてきて、その上に展望台のような物があるみたいだ。
  午後1時、そこを少し過ぎたところにインターチェンジがあったのでFreewayをそれてそこへ向かった。そこはWild horse mountain look outといって展望台となっており、Glass house mountainを眺望できるように作られた物だった。
  そこの麓まで行くと、どうも車を降りて展望台まで歩いていかなければならないようだ。他に2,3台の車が止まっていた。仕方がない、歩いていくことにしよう。 入り口の看板を見ると、ここから頂上まで20分くらいかかるようだ。最初は坂もそんなにきつくなかったが、だんだんと急になってきた。結構しんどい。だが、何とか家族全員上まで上がれた。
  頂上付近にあった看板を見て驚いた。何と銃弾の跡があるではないか。それも散弾銃の小さな跡ではなく、拳銃かライフル銃の跡のようだ。誰かが、試し撃ちをしたのか、オーストラリアも結構恐いところなのかと一瞬不安が過ぎった。

 展望台からの眺めは思った以上にすばらしい。何せ回りに何も無いところにある、高さにしたらどうだろう、40〜50mくらいの山だけど、遥か遠くまで見渡せる。360度の眺望だ。展望台の地図を見ると、15kmくらい北にあるCaloundlaの町も見える。もちろんglass house mountainの眺めも最高だ。
  僕らの後から若いカップルが上ってきた。かなりラフな格好をしている。聞くとは無しに話し声を聞くと、どうやらドイツ語のようだ。ドイツからはるばる旅行に来ているなんて、僕らと一緒だねえ。
  写真をひととおり撮って、山を下りることにした。

 さあ、またFreewayに戻るぞ。Klausのうちまでもう少しだ。が、時間も1時を回って腹が減ってきた。どこかで昼飯にしようと思っても、道すがら町らしい町も無いし、困ったもんだ。しかし、所々点在しているガソリンスタンドを見ると、Fast foodの文字が見える。そうか、このあたりはガソリンスタンドに併設されているんだ。
 
というわけで、ガソリンスタンドにくっついた形の食堂(レストランとは言い難い)に入った。日本でいうと、サービスエリアなんていうものではなくパーキングエリアのうどん屋か、ラーメン屋といった感じを思い浮かべてくれれば当たらずとも遠からずだ。
  ここではハンバーガーとサンドイッチを食べた。何しろ、日本のように写真入りのメニューというのが無いので、出てくるまでどんなものなのか皆目見当がつかない。毎回の食事がギャンブルだ。幸いここでは可もなく不可もなくといったところで、よかった。
  さて、食事も済んだし、Klausの家まで後少しだ。(地図の上では)ここからはオカミサンが運転することになった。そして僕が地図を見ながらのナビゲーターだ。しばらく走って、さあ、ここが出口だ、というところで自動車電話が鳴った。電話を取るとKlausだった。ちっとも来ないので、心配して電話してくれたのだ。しかしタイミングが悪い、オカミサンに指示しなきゃならないし、Klausと話さなきゃならないしで、頭がパニックだ。
  インターを出たところがRound aboutになっており、右に曲がらなきゃならないのが、左車線にいたら、そのまま左方向へ出ていってしまった。
  「おいおい、道が違うぞ!」
  「だって中央分離帯が、、」
  とまあ、目的の反対方向へ走り出してしまったが、大きなパイナップルのはりぼてのあるBig Pineappleという所でUターンした。まあ、ある程度道を間違うのは、初めてのところへ行くわけだから、しょうがない。これも予定どおりだ。
  インターのところまで戻って、Freewayを渡り、Maroochydore(マルチドー)を目指して走る。3kmくらい走ったら今度は左に曲がるはずだ。どこの交差点だろう、どれか分からないまま走っていると、またKlausから電話がかかってきた。通り過ぎたという。彼は僕らが乗っている白のMagnaを知っているので、曲がるべく交差点で待っていてくれたらしい。電話では、その先にSunshine coast Motorwayの下にRound aboutがあるから、そこでUターンするようにとのこと。あった、あった。ぐるーっとRound aboutを回って、引き返す。しばらく走ると、果たして彼の車が見えてきた。Klausの車も以前に乗せてもらったことがあるので、すぐに分かった。そして彼の後を付いていってやっと彼の家に辿り着いたのだった。到着時間は午後3時半。いろんな所へ迷い込んだので結構な時間かかってしまった。

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