18T135pp “AinSebaa17”

PA stage photograph

Cosy MUTO, JH5ESM
31 May, 2007

English


1. Introduction

本稿では18.1MHzスポット周波数のQRP CW送信機を紹介しています. 本機,18T135pp“アイン・セバ17”は,C級プッシュプルの終段ならびに第3高調波に対するトラップを有する出力LPFを特徴とする送信機です.

Ain Sebaaはカサブランカの地区の名前で,STマイクロエレクトロニクスのモロッコにおける製造拠点の一つがあります. 本機で使用したBD135は,おそらくこの工場で生産されたものです.


2. 回路の説明

schematic
図1 アイン・セバ17の回路図.詳細データ の入ったPDF版はこちら

回路を図1に示します.
本機は大きく3つのパートに分けて考えることができます:送信機主回路,キーイング・セミブレークイン回路及び 受信用クリスタルコンバータの3ブロックです.

Q1とQ2は直結型構成の発振及びバッファアンプです. Q3は励振段で,キーイングはこのステージの電源ラインで行います. Q4とQ5がC級プッシュプルの電力増幅器です. この構成は発振段がVXOから普通の水晶発振回路に変更されたことを除いてエウロパ30とほとんど同じです.
発振段とバッファ段の電源及び励振段バイアス電源は安定化しています. 終段に対する励振レベルは,Q2とQ3のエミッタ抵抗を加減して決定します.
出力LPFは第3高調波に対するトラップを有しており,プッシュプル回路が元々持っている偶数次歪みが少ないという特徴と合わせて,品質の良い(言い換えると“クリーン”な)電波をアンテナから放射します.

U1は18MHz帯の受信信号を8MHz帯に変換するクリスタルコンバータ(クリコン)です. 17MHz帯やその他の周波数で運用する大信号の放送電波に起因する混変調や相互変調の影響を小さくするため,クリコン前に10[dB]のアッテネータを挿入することができます. クリコンの入力段はインピーダンス整合を取るため,T5の巻数比は8:1としています. このため,T5だけは(サトー電気の)7Kボビンに手巻きをしています.
親受信機はDE1103“愛好者3号”です.

キーイング及びセミブレークイン回路は汎用PNPトランジスタ(Q6及びQ7)で構成し,リレーでアンテナと5[V]電源ラインを切り換えるようにしています. ブレークインのディレイは50[kΩ]の半固定抵抗で調整します.

回路のほとんどはICB-293(72×95[mm])上に組み上げ,9[V]積層乾電池とともにYM-130(130×90×30[mm])に入れています.
フロントパネルには電源スイッチ,キャリブレーションスイッチと電源ランプ(LED)だけを配置しました. リアパネルには外部DC電源入力,電鍵,アンテナコネクタ,受信アッテネータ及びクリコンの8[MHz]帯出力の各ジャック・コネクタを配置しています.
アッテネータの抵抗回路は6P(双極双投)スライドスイッチに実装しています.
図2に基板写真及び実装状況を示します.

図2  アイン・セバ17の実装状況(写真をクリックして拡大)
top viewrear viewattenuator
(a) 前面上方から(b) リアパネル(c) ATTのクローズアップ

3. 測定結果

出力電力は,12[V]電源で1.13[W]でした. 終段コレクタ電流は160[mA]でしたので,コレクタ効率は59[%]となります.
電電減圧が9[V]に低下しても,0.5[W]の出力が得られます.

出力波形及び信号スペクトルを図3に示します. 高調波はいずれも基本波に対して50[dB]以上小さくなっており,電波法令上の規定は楽々クリアしています(より厳しい値が採用されている「50[W]を超える送信設備」についての規定に適合). QRPとはいえども,このくらいの質は確保したいものです. オシロの観測波形で歪みが見えるようではいけません.

図3 出力信号波形(波形をクリックして拡大)
output waveform output spectrum
(a) 時間軸波形 (b) 信号スペクトル

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