9 帰国

9.1 ビジネスクラス

 8月23日土曜日、午前6時5分にホテルをチェックアウトし、空港にタクシーで向かう。空港には午前6時20分に着いた。カンタスのチェックインカウンターへ行く。さあ、今日でオーストラリアともお別れだ。
 チェックインカウンターでは、行きと同様、2階の幅広席を所望した。カウンターには若い兄さんがいたが、どうも要領を得ない。で、もらったボーディングパスを見ると、なんと72G,H,J,Kとほとんど最後尾の席ではないか。まあ、2階席が無理だとしても、せめてもっと前あたりするのが個人客への常なのに、それがこの席だとは。当然文句を言うも、この若い兄さんではどうにもしようがないらしく、Cairnsに立ち寄ったときに交渉してくれとのこと。やはり飛行機に乗るときは、なるべくエンジンの前に座った方が、音が静かだということが経験的に分かっているので、出来ることならそうしたいところだった。
 飛行機はQF59、午前8時に乗り込む。行きと同じ747-300型機だが、オーストラリア原住民のアボリジニのハデハデの絵が描いてある飛行機だ。で、僕らの座った席は、席の配列が3-4-3から2-4-2になる直前のところで、ほとんどま後ろと言ったところだ。
 周りには、どうも中学生らしい一団が乗っている。かなりの数いる。見たところ夏休みを利用したホームステイツァーらしい。何気なく隣の女の子を見ると、アンケートに記入しているようで、どうも大府市が主催したもののようだ。僕の子供の頃では、外国へ行くなどということが、いや、飛行機に乗るということ自体がものすごく特殊だったのに対し、今ではごく普通に行けるようになったんだ。親の負担など全然気にもしていないんだろうなあ、この子たちは、とふと席の横の我が子を見て、こいつらも同じだろうねえ。
 朝が早かったので、朝食が済んだ後うとうとと寝ている間に、Cairnsに11:40に到着した。ここで、また大量の名古屋へ帰る客が乗り込んでくる。いったん飛行機を降りて待合室で待たなければならない。なんだか席はどうでもよくなってきた。家族で免税店をぶらぶら見て歩いていると、なにやら放送で僕の名前を呼び出しているではないか。
 何事かとカンタスのカウンターまで行くと、なんと別の席を用意するとのこと。受け取った新しいボーディングパスを見ると、我ながら目を疑った。ビジネスクラスの席ではないか。!それも家族全員4人分だ。シドニーのチェックインカウンターで駄目だったのに、ここCairnsでかなうとは。感謝感激雨あられ状態である。やはりフリーケントフライヤーメンバーであり、過去の搭乗記録を見れば、僕は結構乗っているのでそれでアップグレードしてくれたのではないかと思う。
 喜び勇んで家族の元へ戻り事情を説明すると、「さすがはオトーサン」と家族の尊敬のまなざしで見られ、嬉しい限りである。 この余勢を駆ってではないが、オカミサンがバッグが欲しいというので、免税店でバッグを物色していると、中国女性と見られる店員がよってきた。バッチを見ると日本語中国語英語、それにまだいろんな言葉がしゃべれそうだ。まあ、それは良いとして、結構なブランド物のバッグを取り出してきて、今だとキャンペーン中だから正札からディスカウントできるから買わないかという。見ると結構な値段だ。AU$800.-がAU$750.-だという。隣のオカミサンを見ると、なんだかすごーく欲しそうな顔をしている。まあ、旅行中、特に何が欲しいというわけではなかったので、最後だからとつい気を緩めてしまい、買ってやるといってしまった。それにしても高いので、無理は承知でAU$700.-なら買うと持ちかけてみた。免税店で値引き交渉するなんてあまり聞かないと思うけど、いってみるだけタダだ。こういうときは日本語より英語の方がやり安い。変な話だけど、母国語でしゃべると、どうしても自分の感情が見透かされそうなので、下手でも英語の方が、言葉が白黒はっきりしているので、ストレートに相手に伝わる。この場合、日本語だと「AU$700.-だったら買うんだけどなあ」となるところを、英語なら「AU$700.-といたらAU$700.-」という感じになる。
 だけど結果はやはり駄目。ええい、ここは真ん中を取ってAU$725.-でどうだ。するとかの店員もちょっと待て,聞いてくると奥へ戻っていった。しめしめ、脈有りだな、と待つことしばし。OKとの返事が帰ってきた。これで無事商談が成立。いやあ、自分も初めて免税店で値切ったもんだ。
 これには後日談があって、その後も出張でオーストラリアへ行った帰りにここの免税店によったら彼女がいて、ちゃんと僕の顔を覚えていてくれた。まあ、値切り交渉したんだから、覚えているだろうねえ。
 12:20飛行機に乗り込む。これで本当にオーストラリアともさよならだ。飛行機の搭乗口では、いつも入ってすぐ右に曲がるが、今回だけは左に曲がる。つまり飛行機の一番先頭のビジネスクラスだ。(この飛行機にはファーストクラスがない)僕も何回もオーストラリア行っているが初めて乗り込む。 席は4A,Bと5C,Dと二人づつ分かれたけど、大した問題じゃない。乗り込むと早速ウェルカムドリンクだ。エコノミーの席と違い、ちゃんとしたガラス製のグラスで出てくる。椅子は行きでも乗った大きな椅子である。僕の座った5Cの席は、ちょうど2-2列から2-2-2になるところの真ん中で、僕の前には席はなく5mくらい広々と空いている。実に快適である。
 飛び立ってしばらくするとドリンクと昼食が出てくる。食事は前菜とメインと2回に分かれて出てくる。食器類はエコノミーのプラスチックではなくちゃんとした陶器製だ。サービスという点ではエコノミーの席とは段違いである。
 最後の最後で、うれしいことがあると、旅行全体が楽しい思い出になるものだ。

9.2 名古屋空港に着いた

 午後6時20分、定刻より10分早く名古屋空港に到着した。その前、名古屋空港へのアプローチは、三河地方からだんだん高度を落としていくので、夕方日が落ちてきて、町の灯りがだんだんと点く頃になると、何とも美しい光景になる。宝石をちりばめたようなという形容の仕方もあてはまるようだ。特に、町が密集しているところの夜景はきれいだ。
 下をよく見ていると、東名高速道路がわかる。だんだん車が走っているのがわかってくる。もっと高度が低くなると、人もわかってくる。
 通関後の到着ロビーは相変わらずの混みようだ。オーストラリアからの飛行機の乗客の大半が観光目的なので、家人が迎えにきたりしているのだろう。
 僕らはというと、一家できているのでそのようなことはないし、親に頼んでも車に全員乗れない。帰りは東岡崎駅直行の高速バスに乗って帰り、東岡崎からはタクシーで家までたどり着いた。やっとこれでたのしかったオーストラリア家族旅行も終わった。

10 後書き

 ここまで長々と書き記したオーストラリア旅行記を読んでいただきありがとうございました。後半だいぶキーボードのペースが落ちてしまい、果たして最後まで書くことができるだろうかと、自分でも心配になってきましたが、何とかけじめだけはつけなければとの思いだけで書き続けられました。 この旅行記を読んで、何か一つでもみなさんの参考になれば幸いです。また、子供たちが大きくなってからこれを読み返して子供時代の一大イベントを忘れずにいてくれたらと願っております。

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