ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston ・MFA)
                                                       
                                                                   目次のページに戻る

 日本に関する美術品のコレクションが多いことで有名なボストン美術館(MFA)に2006年5月に行きました。
勿論、私の大好きなヨーロッパ絵画にも優れたコレクションが沢山あります。特に、印象派の絵画のコレク
ションには定評があります。私が、ボストン美術館を訪れた目的はこの近世ヨーロッパ絵画をみることが
第1でした。
 この所、毎年5月に米国を訪れることになったため、一昨年はニューヨークのメトロポリタン美術館を、昨
年は、ロスの「Los Angeles County Museum of Art」で「ラ・トゥール」の「マグダラのマリア」などを見ました。
 そこで、今年はMFAを見てきました。流石に、評判に違わず日本の美術品の逸品が揃っていて、展示して
ある場所も、寺院風に作られて、雰囲気を出していました。
  私の見たい、ルネッサンス絵画も、展示している数は決して多くはありませんが、優れたコレクションが
あり十分堪能でき、満足しました。
ボストン美術館の正面入口、広い構内にあり、
この他に左手の西側にも入口がある。
・MFAに行くのは地下鉄が便利                                                    

 ボストンでは、地下鉄(MBTA・Massachusetts Bay Transportation Authority・通称"T")を使って移動す
ると便利で、MBTAを愛用しました。美術館、ボストンコモン、バックベイ、プルデンシャルセンターなど、主
な観光スポットに行くには、グリーンラインが便利です。なお、グリーンラインは、B、C、D、E 線と4種類の
ラインがありますので、行き先によりどの線に乗るかを確認する必要があります。
 美術館へ行くには、「グリーンライン・E線」に乗り「Museum of Fine Arts駅」で下ります。都心からおよそ
10分です。都心の駅では自動販売機で切符を買えますが、地上にでると、日本の市電のようになり、乗る
時に料金(現金で可)を払います。このために、小銭を用意しておくのが良いでしょう。料金は殆どが$1.25
でした。

    MFA駅前を走るMBTA
地下鉄だが都心を離れるとこのように地上を走る。
  グリーンラインE線ボストン美術館駅の近く
朝のグリーンラインB線地上駅
・Boston Univ. West駅
地下鉄ブルーライン水族館駅(Aquarium)のホーム
月曜日の朝9時頃のせいか、乗降客が少なかった。
グリーンラインB線・Boston Univ.West駅に電車が
入ってくるところ。広軌で、ホームも低い。
・MFAに入る

 ボストン地下鉄(MBTA)の「グリーンライン・E線」の「美術館駅・Museum of Fine Arts駅」で下りると、右手
(都心から来た場合)に、美術館の建物が見えます。線路を少し戻り、信号を渡って美術館の構内に入り
ます。
 

MFA構内に入ったところからの写真です。この日は、雨上がりで
曇っていました。左側にスクールバスが止まっていて、小学生が
団体で見学に来ていました。


 入口を入ると、正面にこの階段があります。
 展示階は、1階と2階で、大まかな展示で分けると、1階左手には日本美術、正面奥がアメリカ美術、右手
がエジプト、中近東美術になっています。
 2階は、左手がやはり日本美術、それに中国美術、正面奥がヨーロッパ美術、右手がエジプト、ヌビア美術
になっています。
 この階段を上ると、円形のロタンダで、ここのドームには印象派の画があります。お目当ての中、近世ヨー
ロッパ絵画展示室は、ロタンダを通り抜けた次の部屋からです。

2階に上る正面階段で、円形のロタンダを過ぎてから
17-20世紀ヨーロッパ部門になる。
入館バッジで、METのより
ひとまわり小さい
・ヨーロッパ絵画部門

 私のお目当てのヨーロッパ絵画部門は2階の奥の正面とその左右にあります。
 階段を上がってすぐの部屋は「コッホ・ギャラリー・Koch」で、ルーベンス、ベラスケス、ダイク等16世紀から
17世紀のヨーロッパ巨匠達の絵画の部屋です。
 大きな部屋にこれら巨匠達の絵画が全部の壁面に2段に渡って飾られているのは圧巻です。

コッホ・ギャラリー奥・ルーベンス・ベラスケス達巨匠の絵画
この壁面には、一番奥の上にルーベンスの「Head of Cyrus
Brought to Queen Tomyris」、その下に「Mulay Ahmed」、
中程にはベラスケスの「マリーテレサ」、「Don Baltasar
Carios with a Dwart」、手前の上がダイクの「Princess
Mary, Daughter of Charles I」です。
コッホ・ギャラリー入ってすぐの右側壁面
入口側の壁面で、右上に目立つのがFrans Snydersの
「イノシシ狩り・Boar Hunt」
左下、解説者の説明を見学者が聞いている画はプーサン
「Discovery of Achilles on Skyros」 です。
コッホ・ギャラリー全体を見たところ
画が判りにくいのですが、手前から4番目、5番目の下にある2枚が
プーサンの画です。
・17世紀から20世紀ヨーロッパ絵画

 コッホギャラリーから、先に進むと、正面とその左右にヨーロッパ絵画部門の部屋、10室ほどがあり、17世
紀から20世紀までの画が展示されています。
 今回、私がもっとも見たかったのは、ゴーギャンの「我々はどこから来たのか・・・・・・」でした。この絵は、
2階の左側、一番奥の部屋の奥の壁にありました。
 この部屋がMFAの自慢の一つでもある印象派の絵画展示室で、ゴッホの「郵便局員」、ルノワールの「ブー
ジバルの舞踏会」、モネの「ジャポネーズ」などがあり、ぜひとも見たい絵画がぎっしり詰まった部屋でした。

Where Do We Come From? What Are we? Where Are We Going?
我々はどこから来たのか?我々は何物なのか?我々はどこへ行くのか?

  この画は、ゴーギャンが貧困と絶望の中、個人的な苦しみを乗りこえて1897年から描いた大作です。
 ここで、彼は右から左へ、赤ん坊から老人までを描いて、このタイトルで、この問いを投げかけたので
しょう。 また、中央には、イブが禁断の木の実を取ろうとしているようにも見え、その左側に青色でタヒチ
の神「タアロア」を象徴的に描きました。

 MFAの解説に、左側の老人は「"close to death, "accepts her fate with resignation.・死に臨み、運命を
甘んじて受ける」ことを表現していると書いてありました。
 小説の世界では、ロマン・ロランの「ジャンクリストフ」のように大河小説と呼ばれるジャンルがありますが、
この画はまさに大河絵画とも呼べるのではないでしょうか。

 私は、この画を見るためにボストンまで行ったのですが、期待に違わず素晴らしい画でした、これまで私
が見たものの中で、もっとも感銘を受けたものの一つになりました。ボストンまで行って良かった!!

 
この部屋には、印象派の有名な画がまだまだあります。

ゴッホ「郵便配達員」 モネ「日本衣装姿のカミーユ・モネ夫人」
マネ「音楽のレッスン」 左はドガ「Edomondo and Therese Morbilloi」

右下は、ルノワール「陶器の花瓶に入れた花束
Mixed Flowers in an Earthenwars Pot」
 
ルノワール「ブージバルの舞踏会」
手ぶれでボケてしまいました
 

 モネの「カミーユ夫人」の写真を写していたとき、近くにいたご婦人が、この衣装は日本では普通のものですか?
と聞かれました。アメリカ人(多分)からは、日本では今でもこのような服装をしているのだろうか?と考える人
がいるのかもしれません。

 ドラクロワ、ミレー、ターナーなどの画は、正面左側の部屋で、案内図には、19世紀ヨーロッパ部門の部屋と
書いてありました。先ほどの印象派の部屋の手前にあります。ここにも、素晴らしい画が沢山ありました。
  

ミレー「女性の羊飼い」  ターナー「奴隷船」
MFA解説書によると、1793年アフリカからジャマイカに
向かっていた奴隷船から、132人の病人を海に投棄
した悲劇の実話を描いたものだそうです。
ドラクロワ「キリストの埋葬・The Entombment
of Christ」
ドラクロワ「ライオン狩り・Lion Hunt」


フラ・アンジェリコ「Virgin and Child Enthroned with
Saints Peter, Paul and George(?), Four Angels,
and a Donor」(上)
ボッティチェリ「Virgin and Christ with
Saint John the Baptist」


ブーシェ「Halt at the Spring」
ブーシェのコーナーは、ロコロ調のベッド、椅子などの家具が配置され、
まるでお姫様の部屋の雰囲気になっていました。


レンブラント「Reverend Johannes Elison」(右) レンブラント
 「Portrait of a Man Wearing a BlackHat」
 「Portrait of a Woman Wearing a Gold Chain」


 ヨーロッパ部門の絵画を見ている内に、昼になったので、レストランに行きました。この日は火曜日
ためか、2階の「ブラボー・Bravo」レストランは休みで、1階のカフェテリアが営業していました。
 しかし、ここは席数があまりないので、昼食時間は混んでいました。そこで、少し時間をずらして、1時
過ぎにカフェテリアに行って軽い昼食を済ませ、歩き疲れたので少々休憩しました。
 画を見るのは、歩きづめなので結構疲れます。この日は約14,000歩も歩きました。

・エジプト部門

 MFAのエジプト部門も定評があるので、簡単に見て回りました。ここの収集品は、ボストン美術館が
独自に調査隊を派遣して発掘にあたったそうです。私は若い頃の一時期、エジプト遺跡の資料を限りな
く読んで、知識を増やしたものでした。しかし、次第にエジプト熱が冷めましたが、一昨年METで古代エ
ジプトを見、今回MFAでまた古代エジプト遺跡を見て、以前の記憶が私の頭の中で発掘されました!


 そのほか、当然日本部門なども見て回りましたが、ボストン滞在が、僅か1日に限られていたため、
あまり時間を割けませんでした。

 ここに書いた絵画のタイトルや作者などの資料は、MFA発行のガイド本「A Guide to the Collection of
the Museum of Fine Arts Boston」および、MFAのウェッブサイトを参考にしました。
 また、私は美術の専門家ではないので写真の説明などで勘違いがあるかも知れませんの。その時は
ご容赦下さい。 

・MFAを見た感想

 MFAのコレクションは、およそ50万点と言われています、メトロポリタンやルーブルに比べるとずっと少
ないのですが、そのコレクションの質の高さがMFAの特徴でしょう。実際、印象派の部屋に入ってみると、
ここだけで代表的な印象派の画家の画を見ることができます。展示している部屋の数も多くはありませ
んがそれだけに、ゆっくりと鑑賞する時間をとることができます。
 印象派の部屋は、鑑賞する人が多く、画の写真を撮ろうと思うと、人通りが途絶えるのを待つのに時間が
かかりました。特に、ゴーギャンの画のように横長の場合には時間待ちが大変でした。コッホ・ギャラリー
では、人が居なくなる時間は期待できませんでした。もっとも鑑賞する人達が写っている方が雰囲気が
でるかもしれません。
 こじんまりとしたところで、気の向くまま、ゆっくり鑑賞できるというのが私の印象でした。

・美術館での写真撮影

  殆どの海外の美術館では、フラッシュと三脚を使わなければ、写真撮影が認められています。もっとも、
展示内容によっては撮影禁止の部屋もあり、その場合には「No Photo」などの注意書きがあります。

 しかし、部屋の多くは照明が暗く、ノーフラッシュでは手ぶれの可能性が高くなります。手ぶれの原因の
一つは、シャッターボタンを押すときにぶれるのではないかと思いました。そこで、私はセルフタイマーを
使って写すようにしています。それでも、手ぶれするときがあるので、同じ写真を何枚か写す様にしていま
す。幸い、ディジカメの場合には枚数を気にしないで撮影出来るので安心です。撮影した後、モニターで
画像を確認すると更に安全です。
 まだまだ、鮮明な写真を撮ることが出来ませんが、後は技術を磨くことだと思っています。

2006.9.5

世界の美術ページに戻る