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現在、自作の送信機で電波を出している人波非常に少なくなりました。 そしてその少ない人達が集まってくるところが50MHzの、それもAMモードで
す。
この送信機はその50MHzで、あなたが「自作する人達」の仲間入りするための機械です。
300mWというと非常に小さい電力に感じますが、50MHzというバンドでは能率の良いビームアンテナが使える関係から特にこの電力で不自由を感じる
ということはありません。山岳移動をすれば100km以上のQSOが、またEsが出れば1,000kmを越すQSOだって可能です。
この送信機にはより快適な交信をするために、VXO、マイクコンプレッサを装備しました。
第1図に全回路図を示します。
VXO 2SK241でVXOを構成しています。
水晶発振子は50.620MHzを使用しました。
VXOは水晶発振子の基本波で動作しますのでこの発振段の後に3てい倍器を取り付ける必要がありますが、その結果、50.5MHzから50.6MHz付近
の周波数を発生することができます。
3てい倍器 2SK241で16MHz台の発振信号を3てい倍して50MHzを得ます。
バッファ てい倍器を出た信号の中には16MHz台、33MHz台のスプリアスも含まれているので、それ等を除くために2SC1815に
よるバッファを設けました。
ドライバー 2SC1815を使って終段をドライブする回路です。 変調を深くするためにこの回路にも変調をかけました。
この回路に使っているコイルは「10S50-DR」というもので、標準的な10S50と比べて同調側の巻数が8回と2回多く、2次側は反対に1回と少な
くなっています。 これはスプリアス輻射を小さくするとともに終段を能率良くドライブするためのインピーダンスマッチングの措置です。
終段 終段用トランジスタに松下の、2SC1384-Rを使いました。 このトランジスタは小型でありながら無理が効くので採用しまし
た。
変調は主としてこの段にかけます。
タンク回路には、「ファイナル50」というコイルを使いました。
Tフィルタ 発射する電波のスプリアスを電波法で定める規定に合致させるためのものです。#089の回路をそのまま利用しています。
計算上のQLは5としました。
電波法では、50MHzで、平均電力が1W以下の場合のスプリアスを「100μW以下でなければならない」と規定しています。 100μWは、
300mWに対して-35dBになりますが、このTフィルタを使用した場合、#237としてのスプリアスは-50dB以上とれますから余裕を持って電波法
の規定をパスすることができます。
また、Tフィルタは単なるフィルタではなく、アンテナのインピーダンスにマッチングさせることも出来るので、アンテナチューナとしても便利な回路です。
マイクロホン マイクロホンはECM(エレクトレットコンデンサマイク)を使います。 ECMの電源はLEDのスレッシホールド電圧を利
用しています。 このLEDは基板からはずしてケースに直接設置して「電源表示」として使うこともできます。
マイクコンプレッサ AMのQRP送信機の通達距離を延ばすのには「変調度をなるべく深くかける」ということが要求されます。 マイクコ
ンプレッサはこの要求に答えるための物です。
このマイクコンプレッサはパッシーブタイプで回路は非常に簡単ですが素直な反応には定評があります。(#111参照)
変調器 変調器にはLM-386を使い、終段とドライブ段の各コレクタにかけます。 LM-386は出力インピーダンスが低いので、アウ
トプットトランスのST-83を逆さにして使い、2SC1384-Rのコレクタのインピーダンスに合わせます。
電源 電源電圧は標準を12Vとしますが、9Vから12Vの範囲で使用することが出来ます。 基板の上では「V-OSC」と「V-
TX」の2つのポートがあり、キャリブレーションの際この2つのポートを使いわけます。
(1) プリント基板のパターンを第2図、部品取付け図を第3図に示します。(プリント基板は
#233を使用)
(2) Tフィルタ用コイル 直径8mmの丸棒に0.8mmのウレタン線を11回巻きます。 ここで気をつけて欲しいのは「2つのコイルの巻く方向が
反対」だということです。 第4図を参照してください。
(3) VXO段のコイルは「VXO-2(VX-2)」です。コアはとりあえず上側に引き上げた状態にしておいてください。
てい倍段及びバッファ段のコイルは「10S50」。ドライバ段のコイルは「10S50-DR」です。「10S50-DR」は第5図に示すようにコイル名
の表示に「DR」の文字があるとともに、表示の上の角に黒い線がつけてあります。
このコイルと並列に付ける同調コンデンサは10pFですから気をつけてください。
(4) バリコンの配線は出来るだけ短くしてください。
(5) 変調トランス、ST-83は基板に押し込んでから爪の部分を内側に折曲げてからハンダ付けしてください。
(6) その他のところは特に変わったところはありません。ブリッジ等がないように気をつけてはんだ付けしてください。
(1) 部品の取付けが済んだら、リラックスして部品の取付け間違いがないか良くたしかめます。
(2) 電源(12V)に電流計をつなぎ、短時間、回路に電力を供給して異常な大電流が流れないことを確認してください。(150mA以下なら良い)
(3) 出力端子に#206(205)のパワーメータを接続します。(ダミーロードとしても働く)
(4) RFプローブをてい倍段の2SK241のドレインに当て、L2を調整してメーターの振れを最大にする。
(5) (4)と同じようにバッファ、ドライバの調整をします。
(6) ここまで来ればパワーメータの針が振れて来ると思いますから、パワーメータの針が最大になるようにL5及びVC2を調整します。
(7) VXOコイルのコアを終段の周波数が50.5MHzから50.6MHzの間で変化するように調整してください。
なお、VXOコイルのコアがコイルの中に押し込まれた状態で調整を始めようとすると発振が止まってしまうことがありますから、VXOコイルのコアは必ず
上側に引き抜いたところから調整を始めてください。
これでキャリア関係の調整が完了します。
マイクロホンに向かって何かしゃべればモニターの受信器で声が聞こえると思いますが、変調についての調整をしっかりすることにしましょう。
(8) 変調度の調整用の半固定抵抗は次に述べる変調度の測定法によってセットしてください。
もしあなたがオッシロスコープをお持ちでしたら次のような手順で変調度をはかることができます。
・ #206(#205)のQRPパワーメータに送信機の出力をつなぎます。
・ 第6図のように、パワーメータの検波出力にオッシロスコープをつなぎます。
・ オッシロスコープのモードをGNDに落とします。
・ この時の輝線を中央より2目盛下がったところにセットします。(第7図)
・ オッシロスコープのモードをDCとして輝線の位置を中央に来るようにセットします。(第7図)
・ マイクに向かって変調をかけ、オッシロスコープの波形が中央の上下2目盛に来れば変調度が100%ということになります。
・ 変調度は次の計算式で求めることが出来ます。
Mod%=100 *変調波の振幅/キャリアレベル*2
・ 前項の半固定抵抗は変調度が100%を超さないようにセットしてください。
オッシロスコープがないとき
・ オッシロスコープをお持ちでない方は次の手順にしたがってください。
・ 第8図に示すように、#206(205)のQRPパワーメータの空いている場所にMまたはBNCのコネクタを取り付け、それを50Ωの抵抗で終端し
ます。
・ パワーメータに電力を供給すると、このコネクタにもマイナス何dBかの電力が出ますから、これを受信機に同軸ケーブルでつなぎ、音声がガサつかない
で音量が一番大きくなるところにセットしてください。
・ もし変調度が100%を超しますと、側波帯が広がり、受信した信号の脇の方で「ガサガサ」した音が聞こえるようになりますから、その場合は半固定抵
抗を少し絞ってください。
・ この方法は送信機から出力される信号を直接受信するので、発振段、ドライバー段からの漏れ電波に惑わされることなく電波の状態を観察できます。
SSB送信機の調整の時にもおおいに役立ちますのでぜひお試しください。
・ ご自分でのモニターに自信のない場合や、ローカル局から「サイドバンドが広がっている」というリポートをもらったときは、ローカル局に協力してもら
い、・で示したように半固定抵抗の調整を行なってください。
(1) でき上がった送信機は出来るだけ頑丈なケースに入れてお使いください。
(2) アンテナと電源を第9図の様に切り換えることによってトランシーブ操作ができます。
(3) 送受信のキャリブレーションをしたいときには送受切り換えを「受信」とし、電源を第9図に示すように「V-OSC」にだけ加えることによって
キャリブレーションをとることができます。
(4) 実際にアンテナをつなぐと、アンテナのインピーダンスが正確に50Ωでないと(SWRが1でないとき)終段の調整が狂ってくることがありますか
ら、その場合は調整(6)以降の操作を再度行なってください。
(5)電源電圧は12Vを標準としますが9Vから12Vまでの間で使用することができます。 その場合の出力は12V-300mW、11V-
200mW、10V-100mW、9V-70mW程度になります。
<第1図>#237 AM送信機
オールインワン全回路図
<第2図>プリントパターン
<第3図>部品取付け図
<第4図>T型フィルタ用コイル
<第5図>VXO-2と10S50DR
<第6図>変調度の測定(検出箇所)
<第7図>変調度の測定(オッシロスコープ)
<第8図>変調度の観察ポート
<第9図>運用配線