・戻る
 このページにはまだ図面の張り付けが済んでいません。  あしからず

#226

HF〜430MHz広帯域QRP SWRメータ

 SWRメータの構造にはいろいろなものがあります.
 THE ARRL ANTENNA BOOK(14EDITION)のChapter 15 Antenna & Transmission-Line Measurementsに,第1図に示す抵抗ブリッジの回路が掲載されています.
 このキットは第1図の回路に改良を加え,430MHzまで使用できるものにしたものです(原回路では,50MHzまでしか使用できませんでした).
 改良点については後にのべることとしてさっそく製作に掛かることにしましょう.

            
製作

 第2図に確定した回路図と,第3図にそのプリント基板,第4図に部品配置図を示します.
 製作の順序は次の通りです.
 (1)4箇所あるケースの取り付け穴にタップビスでタップを切ってください(この段階ではケースの折り曲げ作業はまだやらない).
 (2)メータ・パネルの「SWR=3以上」の枠の部分を赤色に着色してください.
 (3)メータのパネルを交換する前にメータの動作確認をしてください.
 動作確認は,12Vの電源にメータと47kΩの抵抗を直列につなぎ,ほぼフルスケールを表示させるか,アナログテスタの×100または×1kのレンジで 確かめることができます.要はメータの針がスムーズに動くことを確かめてください.
 もし,この確認がないままメータパネルの交換のためにメータを分解して不都合が起きましても,交換できませんのでご承知おきください.
 (4)メータパネルを交換します.
 (5)プリント基板の1.6mmの穴3箇所にスルーホール処理用のハトメを打ちます.ハトメを穴に通し,反対側から細い十字ドライバー等でハトメを広 げ,さらにハンマーで確実に固定させてください.
 (6)両端の入力,測定用端子のアース線の所のハトメに1mmのスズ・メッキ線を通し,両面でハンダ付けをしてください.中央のハトメは両面でハンダ付 けしてください.
 (7)プリント基板上の配線を行います.ダイオード,コンデンサのリードはできるだけ短くしてください.なお,C3のアース側はプリント基板の両面でハ ンダ付けしてください.
 (8)ケースにメータ,ボリューム,スイッチ,コネクタを取り付けます.この際,コネクタのアース・ラグの向いている方向に注意してください.ボリュー ムにはつまみを取り付けてください.
 (9)ボリュームに接続するリード線を2本ハンダ付けしてください(他方の端はそのまま).
 (10)スイッチにプリント基板を差し込ます.ただし,ハンダ付けするのはちょっと待ってください.
 (11)ケースを折り曲げ,プリント基板のケースに対する平行性を確かめた後に,基板上の入力,測定端子と,両コネクタとの間をハンダ付けしてくださ い.アース・ラグもハンダ付けしてください.
 (12)スイッチと基板とをハンダ付してください.
 (13)ボリューム,メータ,アース間の配線をしてください..
 (14)ケースの蓋を折り曲げて,ケースに取り付けます.これで一応完成です.

            
調整

 (1)しっかりしたダミーロードを測定端子に取り付け,スイッチを「FWD」として,440MHz以 下で,1〜5Wの信号を入れます.
 (2)ボリュームを回し,メータの針が「SET」に来るように調整する.
 (3)スイッチを「REF」としてメータの針がSWR 1.0付近にあればOKです.
 (4)ダミーロードを外し,(1)〜(3)間での操作を行い,SWRが∞を示せばOKです.
 (5)33,75Ω等のダミーロードがあれば,それらに付いてもテストしておきましょう.
 (6)もし,SWR=1.0のテストが1.0より大きく外れているようだったら,C1の値を微調整してください.

           
使い方

 (1)測定端子にアンテナをつなぎ,1〜5Wの入力で普通のSWRメータと同じ要領で測定してくださ い.
 (2)電力が1W以下の場合は,SWR 1.5のダミーロード(33Ωまたは75Ω)をつなぎ,スイッチをREFとしてメータの針が1.5を示すようにボリュームを調整してからダミーロードをア ンテナとつなぎ換えることにより,SWRを測定することができます.
 (3)上記の場合,そのままスイッチをFWDとして,メータの針が示す予備のSET点を記憶しておけば,同じ送信機で運用する時に限り,FWDのSET をこの点で行うことにより,SWRを測定することができます.
 (4)本機の構造は「通過型」ではありません.測定が終わった段階で本機を取り外し,アンテナを直接送信機に接続して運用してください.
 (5)アンテナのインピーダンスが一定であっても,ケーブルの長さが異なると表示するSWRの値に変化がおきることがあります.430MHzのように波 長が短くなるとこの傾向は非常に強く現れますので,測定の際は特にこの点に注意してください.

          
開発こぼれ話

 最初に紹介したARRL ANTENNA BOOKの回路を,まずは430MHzまで使いたいと言うことで,両面プリント基板を使ったマイクロストリップラインの上にバラックセットを作ってみまし た.ダイオードは1N60を使いました.
 その結果わかったことは…….
 (1) R5とR6は感度を上げるため,それぞれ10kΩまで抵抗値を小さくすることが可能であることがわかりました.
 (2) R3はなくてもFWDとREFのバランスが取れることがわかりました.
 (3) 上記の状態でHFから50MHzまで使えることがわかりました(144MHzでは50ΩのダミーロードでもSWRが1.0まで下がらない).
 (4) 電力的には大体1W以上で働きました(1W以下ではメータの表示が非直線となる).
等というものでした.
 この実験を始めた理由が「430MHzで使えるSWRメータを作る」と言うことでしたから,(3)の「50MHzまで使える」は「50MHzまでしか使 えない」というものでした.
 それでは何故50MHzまでしか使えないのでしょうか? それ以上の周波数では絶対に使えないのでしょうか?
 SWRが下がらないということはどこかにリアクタンス分が存在するのではないかと考えました.
 どこでしょうか?
 いろいろ考えた末にダイオードの持つ容量が怪しいということになりました.
 もしそうなら,どうしたらそれをキャンセルすることができるでしょうか?
 D1が容量を持っているとしたら,R1にそれに相当する容量を持たせればよいのではないでしょうか.ダイオードの容量は約2pFと見当をつけ,R1と並 列に取り付けてみました.
 その結果,HFから430MHz帯までの間,50ΩのダミーロードをSWR1.0付近に持っていくことに成功しました.
 後に1.5pFと2.5pFで試してみましたが,2pFが一番よい結果となりました(使用するダイオードによってこの値が変わってくる可能性はありま す).
 入力が1W以上では,ダミーロードの抵抗値に対して周波数に関係なく非常に素直に反応しました.これは今までのSWR計にない優れた特性で,おそらく製 作後の調整は必要ないのではないでしょうか.
 このことは,キットとしての再現性の向上にも役に立つと思われます.