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このポケットトランシーバは大きさ50×80×35mm。電池を含めた全重量が150g。トランジスタ1石、 FET3石、IC1石の50MHz
AMのトランシーバです。
回路構成は第1,2図に示すようなもので2ステージの送信部にLM-386による直列変調
*。受信部は高周波1段、超再生検波、低周波1段のレフレックス超再生回路です。
電源は006Pで受信時1.5mA、送信時20〜25mA程度の消費電力ですから
QRPというよりQRPpというべき領域のものです。 それなのに1,759kmのDX記録や
AJDの完成などができたのですから面白いものです。
とはいっても、これでもれっきとしたアマチュア無線用のトランシーバですから、免許は必ず取ってから運用して下さい。
*この直列変調回路はFCZ研究所のオリジナル回路です。
E s EスポによるDX記録 1 , 7 5 9 km
G W グランドウエーブによる記録 3 1 0 km
2WAY #067 交信相手も#067 8 2 5 km
20 km 1979年 □月 □日 JL1HJT(神奈川県横須賀市)→JI1OQH(千葉県鋸山)
57.5km 1980年 4月 5日 JH1MBQ(神奈川県厚木)→JI1TZD/1(山梨県富士五合目)
63.5km 1980年 4月 6日 JK1WBZ/1(横須賀市武山)→JH1EMH(埼玉県川口市)
82.5km 1980年 4月27日 JH1MBQ/1(厚木市辺室山)→JJ1VRI(千葉市)
110 km 1980年 5月18日 JH1MBQ/1(神奈川県八州ケ峰)→JL1GYA(茨城県筑波山)
180 km (GW) 1980年10月12日 JH1MBQ/2(静岡県遠笠山)→JM1PPP/1(茨城県筑波山)
1,439 km (Es) 1981年 6月21日 JH6FZN(福岡市)→JH8QBY(北海道江別)
310 km (GW) 1981年10月 4日 JH1MBQ/2(静岡県遠笠山)→JJ1OSG(仙台平)
1,759 km (Es) 19□□年□□月□□日 JH6FZN(福岡市)→JH8ANO(北海道)
□□ km 1980年 5月18日 JH1MBQ/1(神奈川八州ケ峰)←→JI1EBB(神奈川県寒川町)
88 km 1980年10月12日 JH1MBQ/2(静岡県遠笠山)←→JR1FTE(東京町田市)
178.8km 1981年 5月 5日 JH1MBQ/2(静岡県遠笠山)←→JJ1OSG(足利市大小山)
256 km (GW) 1981年 7月19日 JH1MBQ/2(静岡県遠笠山)←→JJ1OSG/7(福島県八溝山)
825 km (Es) 1982年 5月30日 JH1MBQ(静岡県遠笠山)←→JH6FZN(福岡市)
JN1NGC(神奈川県) 1991年 完成
◆送信部
発振回路 2SK192Aを使った 3rdオーバトーン回路です。 FETを使った理由は部品数を少しでも少なくしたかったためです。 コイルは 7mm角の FCZハムバンドコイル07S50を使って超小型化に対応しています。
電力増幅回露 2SC1815Yを使用しました。これは発売当初に使っていた2SC735GRと能率をそろえるため特に選びまし
た。このトランジスタの採用で10年以上昔の機械とDXのレコードを競うことができます。
変調方式が変わっていますのでこのトランジスタのコレクタ電圧は、電源電圧の約半分になります。
変調回路 一般にAM変調回路には変調トランスが必要ですが、このトランシーバではこれを使っておりません。 これにはちょっとし たトリックがあるのです。
第3図を御覧ください。 これはLM-386を使ったアンプの基本図です。 出力端子に直流電圧計をつなぎ、電源をつなぐと、入力端子には何もつ
ながない状態で出力端子には電源電圧の約
1/2の電圧が現れて来ます。
LM-386の入力端子は2つありますが3番ピン(非反転入力)に図に示すように
Rを通して電源電圧を加えてみると、出力端子には電源電圧より0.6V低い値の電圧が現れます。
次にSWを2番ピン側(反転入力)に倒して電源電圧を与えると出力端子には約0.6Vの電圧が現れます。
もし、電源電圧が9Vとすると出力端子に現れる電圧は4.5Vを中心にして0.6Vから8.4Vまで変化することになります。 この事は、変調用電圧が
電源電圧の半分になる事を我慢すれば、変調トランスなしで立派にAM変調が掛けられることを意味しています。
ところが、ここに一つ問題があるのです。 というのは出力電圧が0.6Vずつ蹴られるので、どんなに頑張っても変調度が86.7%で止まってしま
うのです。
AMの、特に QRP機の場合、変調度は非常に大切な物で、これをできるだけ深くする事がAMの電波を遠くへ飛ばすコツともいえるのです。
こんな時、今ではもう名前すら知らない人が多くなってしまった「ハイシング変調」の、変調を深くするノウハウが役に立つのです。 まさに「温故知新」で
す。
それが R-6と C-8です。 LM-386から2SC1815Yに電流が流れる途中に
R-6が入ると、2SC1815Yに掛かる電圧は若干下がります。 しかし、変調成分は交流ですから
C-8を通ってほぼそのまま2SC1815Yに掛かります。
2SC1815Yのコレクタ電圧が下がって、変調電圧は元のままなので変調度が上がるというものです。
コレクタ電圧が下がると言う事は出力が下がってしまい面白くないとお考えの方もあると思いますが、変調電力をそのままで搬送波電力のみいくら増やしてみ
ても、受信機で声になる電力はまったく同じですから、搬送波のみに電力を消費させるのがいかに非合理的な事かおわかりいただけると思います。
この変調器にはコンデンサマイクが内蔵されていますが、寺子屋シリーズキット #051ヘッドマイク、#097棒マイクを取り付ける事ができます。
本機のスプリアス特性を第4図に示します。
◆受信部
高周波,低周波増幅回路(レフレックス回路) 2SK241GRはMOS
FETで、アンテナから入って来た高周波を安定に増幅します。 そしてこの2SK241GRにはもう一つの役目があります。超再生検波回路で検波された
AF信号をもう一度この段に戻して増幅する、いわゆるレフレツクス回路としての役目です。そのため、ソース回路にはRF用とAF用の二つのパスコンが入っ
ています。
超再生検波回路
FETを使った超再生検波回路です。超再生検波には独特のクエンチングノイズというノイズが発生しますが、このノイズを静かに、かつスムーズに発生させる
のが超再生検波の調整のコツです。
クエンチング発振の調整はC-17とVR-1により行いますが、特にC-17の値は重要であり、この容量のカットアンドトライがこのポケットトランシー
バの調整上一番のかんどころとなります。
また、この超再生検波回路を直接アンテナにつなぐと、クエンチングノイズがアンテナから逆に輻射されて近所の局やTV等に妨害を与えることがあります。
このトランシーバでは高周波増幅回路を設けることによって,この妨害を極力小さくなるようにしていますから、他局への妨害を気にしないで済みます。
検波出力はC-18,R-11,C-11等によりクエンチングノイズ成分をカットしてから低周波増幅段へ戻されますから耳障りの良い音になります。
受信段でも、コイル、コンデンサなどに小形化の努力を払っています。
◆ケース
ケースは専用穴開け加工済みですが、ふた取り付け用のネジ穴のタッピング加工と、折り曲げ加工を製作者が行って下さい。
まず、ケースの4隅にあるフタ取り付け穴(バカ穴)にセルフタップネジ(黒色)を使ってタッピング(ネジきり)をします。 この作業は焦らないでゆっく
り行って下さい。
次にケースとふたのプレスラインにそって折り曲げてください。 表面保護フィルムを剥がしてケースの完成です。
蓋の固定は3×4のビスを使って行います。
ケースの塗装を行なう場合は、この後、ケースの表面をサンドペーパーで磨いた後、油分をよく取り除いてから実施して下さい。(ふたの白い塗装面には直接
塗装することができます。)
◆基板回路
セットの小形化のためプリントパターンが大分混み入っていますから、ハンダ付けの際、隣のパターンまでハンダを流してしまわないように良く注意して行っ
て下さい。 ハンダの仕上がりは、ハンダがボソボソしないできれいに流れ、ピカピカ光っているようなのが最高です。
C-17は後で交換することがありますから、リード線を
5mmぐらいに切ってからプリント面に直接ハンダ付けしておき、調整後正規の位置に取り付けるようにして下さい。
基板上 Jマークが付いているところはジャンパ線を付けるところです。
基板回路が出来上がったらケースに組み込む前に調整を行います。
◆送信部
基板上のM端子と GND(アース)の間にコンデンサマイクユニットを仮に配線します。
T端子に1m位のビニール線(アンテナ)をハンダ付します。 そのあとTB端子(+)と
GND(−)の間に9Vの電源をつなぎ、調整に入ります。
調整はL1とL2だけですから簡単といえば簡単ですが、慎重にやって下さい。
RFプローブ(寺子屋シリーズ#006)を◇点に当て、テスターの針の振れが大きくなるようにL1のコアを回します。
(オーバートーン発を起こすためにはL1のコア位置は表面より 2〜 3mm入ったあたりになります。)
次にRFプローブを◇点に移し、テスターの針が最大になるようにL1のコアを微調整します。 L2の調整は◇点にRFプローブを当て、テスターの針の振
れが最大になるようにしてから、別の受信機で実際に受信して、変調された声が一番大きく、かつはっきり聞こえるように調整します。 (◇点の方が◇点より
電圧が高いはずです。もし低い場合は発振がオーバートーンでなく基本波発振になっている可能性があります。L1のコアを押し込んで見てください)
そのときの出力は先の調整時の出力より若干下回るかも知れませんが、変調音による調整を優先させて下さい。 場合によってはL1も調整し直す必要がある
かも知れません。
このポケットトランシーバに使っている
07S50というコイルはコイルそのものが小型であるため、それに使用しているコアも小型であり、また材質からも壊れやすい物です。 このコアを回すには
コイル調整棒(寺子屋シリーズ#027)がFBで、先端部に金属を使ったドライバーは使わないで下さい。 また、不幸にしてコアの一部を欠いてしまったと
きは、一度抜き取って逆さにいれ直すことが可能です。
送信部が終わったら1mのビニール線を(アンテナ)を R端子につなぎ変えます。 P端子と
GNDの間にクリスタルイヤホンをつなぎ、RB(+)とGND(-)に9Vをつなぎます。
まず、VR-1を回して、どこかで「サー」とか、「ザー」という音が出てきたらしめたものです。 どうしてもこの超再生特有のクエンチングノイズが出て
こないときは、C-17の値を
2〜30pFの間でいろいろ交換してみてください。
「プー」という低周波発振(耳が痛くなる)を起こすときも、このC-17を調節してみてください。(少し大きな容量にすると良いようです) とにかく、
このノイズが出てくれば調整の半分以上完了したのも同然です。
次に別のトランシーバから50.62MHzのAM信号を出し、これが受信できるようにL-3,L-4のコアを調整します。
これで受信できるようになったら、信号を出すトランシーバを 10m位離して、さらにVR-1,L-3,L-4を最高感度になるように調整します。
C-17を正規の場所にはんだ付けします。
(1)まず、SW-1,SW-2,外部マイクジャック,イヤホンジャック,アンテナコネクタ,をケースにしっかり取り付けます。
(2)マイクロホンの穴のところへコンデンサマイクユニットをエポキシ接着剤で接着します。
(3) 006PスナップをSW-1(赤)とイヤホンジャック(黒)の GND間にとり付けます。
(4)SW-1からSW-2への配線を行う。
(5)SW-2の電源側中点と BNCコネクタの GND間に100μFの電解コンデンサを付ける。
(6)第8図に示すように基板の穴を通して0.8mmのスズメッキ線をはんだ付けしておく。
(7) ECMとマイクジャック間,マイクジャックと基板のM,GND間を接続する。
(8)イヤホンジャックと P端子間を接続する。
(9) SW-2とR,T端子間を0.8mmスズメッキ線で最短配線する。ただしショートしないように注意する。
(10)BNCコネクタの芯線側を少し切り詰めてから、SW-2の送受切り替え側の中点との間をスズメッキ線で配線する。
(11)基板の GNDとBNCコネクタの GND間を配線する。
(12) (6)で処理したスズメッキ線の先端を外部マイクジャック,イヤホンジャックの GNDにつなぐ。
(13)基板をケースにネジ止めします。
(14)006Pの電池がケースの奥まで沈んでしまわないようにワイヤフックで枕を作ります。
ケースに入れるといろいろの条件が変わってきますから、もう一度調整をやり直します。 調整・でしっかり調整してあれば、後は各コイルとVR-1 の微調整だけで完成です。
とくに難しいことはなく、アンテナとイヤホンをつなげば交信できます。 アンテナはホイップアンテナ(ミズホのピコ用ホイップがFB)でも、一般
的な外部アンテナでも結構です。 相手がこちらの送信周波数を受信してくれさえすれば交信は可能です。 只、CQを出している局が入感したからといってす
ぐ呼んでみても受信機の選択度が一般のトランシーバにくらべてワイドなため、相手の周波数とこちらの周波数が一致しているという保証はないので交信出来な
いことも多いでしょう。
やっぱり、ローカル局同志でいつも同じ周波数で交信するような場合に向いていると思います。
ホイップアンテナを使った場合、このポケットトランシーバ同志の交信可能距離は約100m位です。 相手が普通のポータブルトランシーバだったら
300m〜500m位は交信可能となり、さらに相手がビームアンテナなどの本格的なアンテナを使えば
1km近い交信が可能となります。
一方このトランシーバに外部アンテナをつなぎ、交信テクニックとチャンスに恵まれれば、別表に示すようにかなり遠くの局と交信が可能となります。
外部アンテナを使用するときはそのアンテナを付けた状態でL-1,L-2を再調整してください。
このポケットトランシーバは1950年代後半に流行った
3A5によるトランシーバの現代版といって良いでしょう。 その頃の50MHz帯はバンド中に
2〜3局も出ていれば「今日は賑やかだ」という時代でしたから100kHzや200kHz周波数が離れていても交信が可能な時代だったのです。
それにひきかえ今日では、ほとんどの局が SSB運用していて5kHzも離れていると鼻も引っ掛けてくれない時代になってしまいました。
でも、うれしいことに? 現在、50MHzのAMで運用している人が大変少なくなっています。 と、言う事は、AMをやっている人はバンド中をワッチし
て居る可能性があるわけです。ですから、こんなに小さなトランシーバでも思わぬDX局とつながる可能性があるのです。
DX局はともかくこのポケットトランシーバは、その性能について余り神経質に考えずに気軽なオモチャとして考えていただき、アンテナの調整とかリクレー
ションの連絡等に楽しみながら使ってください。
もしDX局との交信ができましたら、 FCZ研究所までリポートしてください。