Cosy MUTO,
JH5ESM
11 April, 2009
このページでは,一種類のPNPトランジスタ(具体的には2SA1015GR)だけで作った7MHz用ダイレクトコンバージョン受信機
について紹介しています.
本機次のようなコンセプトで設計・製作しました:
図1 7R1015BB回路図(図をクリックして拡大.PDF版はこちら.)
図1に本機の回路図を示します.
入力信号は簡易アッテネータを通した後,T1で平衡型に変換されるとともにRF BPFで帯域制限されます.無調整化のため,RF BPFは狭帯域とはせず560kHz帯域としています.
ミキサ回路(Q1~4)はダブルバランス型ですが,トランジスタのマッチングは何も考
慮していません.実際Q1~Q4には,同一ロットの
200個入り袋から何の選別もせずに任意に取り出した4本を使っています.
ミキサ負荷抵抗は820[Ω]としました.これにより,T1の巻数比は1:4となります(ミキサのトラン
ジスタがスイッチ動作するとみなせば,50[Ω]を820[Ω]にインピーダンス整合させるような巻数比を与えればよい).
ミキサ負荷抵抗に0.1[µF](積層セラミックではなくフィルム型)を並列接続することにより遮断周波数1.9[kHz]の1次LPFを構成し,復調出
力の帯域制限を行っています.
ミキサ出力は2段縦続接続の差動アンプに入力されます.
DC受信機の最大の欠点は,ミキサの2次特性に起因するAM通り抜け(早い話が二乗
検波による復調)にあります.バランス型構成にすることで,ノーマルモード(差動モード)にはAM通り抜けは出てきませんが,コモンモードには僅かなバラ
ンスのずれによる通り抜け成分が残留します.
差動アンプを2段用いることで,そのCMRRによりコモンモードに残留するAM通り抜け成分を抑圧することを狙っています.
低周波段は電圧増幅の後,昔懐かしいCE分割回路で位相反転信号を作って,同一極性トランジスタのSEPPによりヘッドホンを駆動して
います.
受信機全体の利得が70[dB]程度しかありませんので,スピーカを鳴らすには力不足ですし,音量ボリュームの通常位置はほぼ右一杯のところになるかと思
います.
利得が低めとはいえ,位相補償がないと盛大に発振します.本機では,差動段と低周波段のコレクタ負荷に並列接続されているキャパシタ(これはオーディオ
フィルタも兼ねる)及び電源デカップリングフィルタで位相補償をかけています.
VFOはLC発振型とし,入手難となり高価になったバーニアダイヤルやボールドライブの使用を避けるため,2個のFM用ポリバリコンを
用いた疎同調・微同調ダイ
ヤル方式を採用しました.周波数範囲は6.940~7.270[MHz]です.微同調ダイヤルでは約15[kHz]を可変することができます.
VFO電源は,ダイオード接続したトランジスタの4直列回路で安定化しています.
回路はブレッドボード(EIC-102BJ)
上に組み,L型アルミ板で作ったフロントパネルとリアパネルを取り付けました.図2に実装の模様を示します.0.3インチのジャンパワイヤがたくさん必要
ですが,0[Ω]ジャンパ抵抗を使うのも手でしょう.
フロントパネルは左からヘッドホンジャック,音量兼電源SW,微同調ダイヤル,疎同調ダイヤル,RFアッテネータです.
ブレッドボードとパネル取り付け部品との間の配線は,0.5[mm]の単線を用いています.
パネル面の仕上げは,A-Oneの透明フィルムラベルにプリンタで印刷したものを全面貼り付けしています.エッジを折り返しているのですが,このラベル用紙はそのような処理を元々想定していませんので,エッジ部分の仕上がりにはちっぴり不満が残ります.
(a) フロントパネル | (b) ブレッドボード上のレイアウト及び配線 | (c) 背面から見た様子 |
受信周波数範囲 | 6.940~7.270[MHz] |
感度 | 20[dBµ] @10[dB] (S+N+D)/(N+D) |
0[dBµ]信号受信可能(受信限界レベル:-10[dBµ]) | |
電源 | 単三乾電池2本(DC 3[V]) |
RFコネクタ | BNC 50[Ω] |
低周波出力端子 | 3.5[mm]ステレオ,16~32[Ω] |
消費電流 | 5.3[mA](無信号時) |
外形寸法 | W183 × H60 × D98 [mm](ツマミ,突起部を除く) |
質量 | 0.32[kg](電池含む) |