1 出発前

1.1 なぜオーストラリアか
 なぜ今オーストラリアなのか。話しは一年前(1996年)にさかのぼる。去年の夏のころであった。僕のオカミサンが、
 「家族で旅行したいね、どこか遠くへ。」
 
「遠くへって、どこ?」
  と、半分気もなく聞き返す僕。
 
「下の子供がカンガルー見たがっているし、私も鯨見たいからオーストラリアなんてどう?」
  「オーストラリアああ!!」
  「両方の両親も元気なことだし、下の子供も来年には小学校へあがって、低学年のうちなら勉強もそんなに忙しくないだろうから、今がチャンスじゃないかしら?」
  「そうは行っても家族4人でオーストラリア行くなんって、金はどうするんだ?」
  「お金なんかどうにでもなるんじゃない。ボーナス貯めれば。」
  「だけど僕のボーナスだけじゃとても間に合わないよ
  などという会話がことの始まりだった。
  一人で行くのと違って、家族4人が行くとなると、何でも4倍かかってしまう。旅行費用にしても、食事代にしても。


Forest Glen Sanctuaryのコアラ


  しかし、オーストラリアというのは僕にとっては他の国とは違う特別な気持ちがある。それは、僕の勤め先の製品の80%がオーストラリアへ輸出しているのだ。また僕自身の仕事も海外営業として、常日頃からFAXや電話のやり取りで、常にオーストラリアと接触しているのだ。
  それに今までに仕事で何度かオーストラリアへ行ったことがあって、ある程度勝手も分かっているし、オーストラリアへ行けば仕事の付き合いで友達になったオーストラリア人もいるので、その人に会いに行くこともできる。
  とまあ、行くにあたっての下地というか、それなりの理由はあるが、問題はお金だ。
  「差しあたってのボーナスの使い道はないことだから、これからボーナス3回貯めて来年というのは?」
  というのがその時の結論だった。まあ、今年(1996年)じゃなく来年なら、準備期間も取れるし、旅費も貯まるだろうということで、その時は終わった。
  実は、このオーストラリア行きの前に、結婚10周年記念で、香港へ行こうかという話しがあったのだが、その時はいろいろ準備不足や、子供の問題で没になったのだ。だからオカミサンは、
 「本当に連れていってくれるかしら?」
  という疑いの目で僕を見ていた。
  まず、いつ旅行をするかを決めなければならない。そこで、この計画をオーストラリア人の友人Klausに話すと、快く協力してくれることになった。(結局この人には最後まで世話になりっぱなしだった。)
  いろいろ話しを聞くうちに分かったことは、オーストラリアのホリデーシーズンは、12月から1月である。この時期日本でいうと初夏のころで、気候がよい。また、クリスマス休暇と重なるということで、休みを取る人が多いとのことだ。それと、日本の8月頃はオフシーズンだし、真冬ということで(スキーをするなら別ですが)行くことに躊躇した。
  やはりせっかく行くんだったら、気候のよい年末年始にかけて行きたいではないか。この場合1997年の年末というだ。これならボーナス3回分貯めることができるので、予算面では問題なさそうだ。
  が、二つの問題点が見つかった。一つは、クリスマスと重なるとなると、オーストラリア国内でもハイシーズンということで、ホテルや交通費が割高になる。二つ目として、じゃあクリスマス前に出発するとなると、自分も子供たちも仕事や学校を休まなければならない、などである。
  最初の問題点はかなり深刻でして、何せ家族4人の旅行ですから、少しの金額の差でも、4倍になって跳ね返ってくる。昨年末、友達の家族がラスベガスに旅行したときには、一日の違いで、何万円も違ったことを聞いていたので、ことは重大である。
  これなら1997年の8月にしたほうがいいかな?と、心はそちらのほうへ傾いていったのだ。まあ、シーズンオフで寒いだろうけど、着る物さえしっかり持っていけば何とかなるかなあ。金銭面では、夏のボーナスもらった後だから問題ないし、、、、
  ということで、旅行は1997年8月に行くということに決めたのは、1996年も終わりのことであった。

  僕たち家族が選んだ旅行先、オーストラリアは、皆さんご存知のとおり、日本のほぼ真南の南半球に位置している。季節は日本とはまったくの正反対で、8月といえば冬真っ盛りだ。時差はほとんどなく、シドニーやメルボルンとは1時間日本のほうが遅いだけだ。だけど、サマータイムを実施しているので、夏になると(日本では冬)2時間の差になる。
  国の広さは日本の23倍あり、アメリカといい勝負といったところだろう。人口は約1700万人しかなく、日本の1/7だ。広さが23倍で人口が1/7ということは、人口密度でいうと、161倍も違うことになる。いかに日本は狭いかとうことが、よく分かる。
  しかしながら、人口の大半はオーストラリア大陸の東海岸に集中しており、内陸部はほとんど砂漠地帯なので、その差はもう少し少ないかな。いずれにしろ、大きな国オーストラリアである。

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