This site devoted entirely to Amateur Radio


ZL1WY / ZL7  Chatham Islands


風の島 チャタム島 その6

ZL1WY 三宅 広幸

 12月1日の夕刻、外から帰った私は14MHzのCWで大きなパイルアップを受けます。
特にヨーロッパと北米へのパスが良く、両者が同時にガンガン呼んできます。その合間に日本の局が聞こえますが、こちらも充分な強さですので、益々パイルは大きくなって行きます。
今回の運用で感じた事は、予想外にヨーロッパの信号が強いという事です。そして、まったく予期しない時間帯に、ぽっとヨーロッパから呼ばれるのも、ちょっと意外でした。
 この現象をJH6RTO(AH0R)福島博士にお尋ねしたところ、地球上の対称点である事がその理由でしょう、とのお答えでした。
いつもイギリスの様なヨーロッパの深い所とのQSOは、他のヨーロッパ諸国と比べると比較的辛いのですが、ZL7では反対でした。
びっくりする様な強さでイギリスから呼ばれると、何だかとても不思議な感じがしていまいます。

パイルの最中に、Valが夕食を食べないか?と誘いに来ました。
彼は無線の事は何も分からないが、私がかけていたヘッドフォンをはずして凄まじいパイルの様子を聞かせると、「耳が痛くなる」と云って笑っていました。
パイルの途中で、一旦QRTして彼と夕食をたべに行く事にしました。
ホテルのレストランのとなりには、イギリスのPubそっくりのカウンターバーがあります。
私は結局最後までそこで飲む事はありませんでしたが、地元の人々の社交場としてにぎわっているようでした。



ホテル併設のPub
夜ともなると地元の人々で賑わいます

 来島の際に、同じ飛行機に乗り合わせた男性4人組が、やはりValのホテルに宿泊していて、毎晩一緒に食事をする事になりました。
彼らは政府職員で(教育省)、島の小学校関連の仕事でやって来たそうです。
来島の日、レストランに行くと彼らがいて、その中の1人からテーブルに誘われて一緒にワインを飲みながら食事をしました。
以後、帰る日まで食事を共にするのですが、それは楽しい夕食でした。
彼らはあまりビールを飲まず、ワインを好んで飲んでいました。
私もずいぶん飲ませてもらいましたが、とうとう最後まで彼らにおごってもらうばかりでした(笑)
この日の食事は、やはり目の前の海で獲れるCod(タラ)を使った料理ですが、今日はバターソテーでした。
1時間余りの楽しい食事は、私からパイルアップの夢を一瞬忘れさせるほどの素晴らしい時間でした。

教育省の人々
女性はレストランのマネージャー

食事を終えて部屋に戻る時間でも、外はまだ明るさを残していて、夏の到来を感じさせます。
しかし、風はますます強く、気を付けないと体を持ち上げられる瞬間があります。
海は、と見ると、洋上にいくつものうねりが立っていて、やはり相当な風である事を示していました。
 部屋に戻って14MHzを聞くと、日本の信号がまだ大変強く聞こえるので早速CQを出して見ると、すぐに応答があり、さっきと同じようなパイルアップが作られました。
この後、7MHzに移ってもパイルは続き、現地時間の深夜まで運用を続けました。

翌12月2日は日曜日です。
朝、明るい日差しが差し込んできます。
しかし風の止む日はなくて、風の通り道の松類が、みな風の方位を示すような姿をしているのがうなずけます。
今朝はValが庭いじりをしています。
彼の風貌からしても、祖先はイギリス系であると想像しておりますし、また彼の家の庭もそれを裏付けているように思えます。
花を育て、草木の手入れをし、誰に見せる訳でもない自らの庭を手入れする姿には、孤島で暮らす悲哀みたいなものはみじんも感じられません。
きっと不自由を感じる事はあるはずなのに、彼や島の人たちはニュージーランド本島の人たちと何ら変わらぬ生活をしているのに驚きます。
全体の所得で云えば、我々よりもはるかに少ないはずですが、素晴らしくきれいな家に住み、また充実した暮らしを送っている姿に少々考えるところもありました。

今日は日曜日なのでレストランも休みで、予約をしていなかった私は食事をすることができません。
そこでValに頼んで、スーパーマーケットを開けてもらって食品を手に入れました。地元製のハムやベーコンがとても美味しいのですが、如何せん量が多くて1人では食べ切れそうもありません。
仕方なくそれらを諦めて、パンやスナック、飲み物を買って我慢する事にしました。



島で唯一のスーパーマーケット
海を見下ろす位置にある
私はこの建物の裏側に滞在した

 ここでの時間で深夜にパスがあるので、どうしても生活が逆転してしまいます。
こちらの16時頃(日本時間の昼過ぎ)からやっと何かが聞こえ始めるので、何処かへ出かけるには午前中が適しています。
しかし朝方近くまで運用している私にとって、やはり早起きは辛いです。
今日は日曜日ですから、さすがに周りものんびりとしている感じがあって良いですね。
私のベッドの枕元に大きな窓があって、明るい日差しを浴びながら横になっているのは、また格別なものがあります。

 この日の06:30Z過ぎに、50MHzでかすかな信号を感じました。
最初、ビーコンの合間に少し強い信号を受信しましたが、こちらが21MHzのSSBを運用していた事もあって、もたもたしている内に感を失いました。
その後、弱いながらもZL3NWが入感してQSOに成功。
これが今回の初めての50MHzのQSOになります。
すぐに今度はZL3TY Bobが聞こえて来ました。
今回彼には大変にお世話になっていたので、ここで彼とQSOに成功して本当に嬉しく思いました。
06:48から数分間、信号の存在はわかるのだけれど、どうしてもコールサインの確認できない局がおりました。
その後すーっと消えて行ったその局が、今でも日本の誰かであった様な気がしてなりません。
結局、50MHzでQSOできたのは、ZL3の4局のみでした。
明日も同じ時間帯にトライしてみようと思いました。
07:00Zから21MHZのCWで運用を始めました。
日本の局を中心にヨーロッパも混じって、結構なパイルアップになります。
現地時間の朝方02:30まで、あちこちのバンドでサービスをして就寝しました。

   1 - 2 - 3 - 4 - 5 - 6 - 7 - 8 - 9     

| Back |