QRPプロジェクト

QRPプロジェクトを始めてたのが97年の10月下旬、結果がだんだん出てきましたのでこのページでご紹介したいと思います。

PIXIE2

ある日シリコンバレーの中心部サンタクララにあるHSCにて$9.99のQRPのトランシーバーのキットPIXIE2を発見。当時無線を休止していた私は、冗談のつもりで店員に「これ動くの?」と尋ねたところ、「Sure!」に続いてこれは大人気のキットでバックオーダー(予約販売になっている)とのこと。まるで、無線界の「たまごっち」。私は6回目のチャレンジで予約してやっと手に入れることができた。

キットの構成は、PCボードと部品一式でクリスタルは別。思うところがあり7MHzのクリスタルを別途購入していたので(実はQRPのリグを設計中だった)それを使うことにした。

回路構成

私は、この回路をみてぶっ飛んだ!!何と2石の汎用NPN(日本でいえは2SC1815)とLM386で構成されている。FCZコイルもない。

2日間回路図を見て動作がやっと分かった。以下に回路動作を説明する。

発振回路

発振回路はスタンダードのコルピッツB−E型の発振回路、C1=C2=100PFで中点タップ。
エミッターから出力を取り出している、非同調形の構成である。

送受信回路

2石しかないので当然送受信を1つのトランジスターで行う。ただし、切り替え回路なしでコレクターはLPF経由でアンテナにつながりっぱなしになっている(RF的に)。回路図にキー端子が抜けているが、キーは送信・受信担当のTXのエミッターとグランド間に接続する。

まず、受信時には、ベース注入型ミキサーとして動作する。前述の発振回路のキャリア信号はベースに加わり、かつ、エミッタ側からRFCでベース電位を与えカットオフすれすれで動作させているところがミソである。変換利得はほとんどなく、むしろスイッチ動作とみるべきであろう。

出力はエミッタ側から取り出し、LM386に入力され42dBTyp.で増幅される。私はこの出力をヘッドホンで聞いているが、夜中はヘッドセットを机に置いておくだけでワッチができる程度の十分な出力である。

次に、送信時はエミッターをグランドにおとすことでベースからのキャリアをアンプをする。恐らく飽和領域まで使っているので、C級動作に近いと思う。出力はLPFが入っているので出力が小さいこととあいまって高調波障害は確認されない。カタログでは200mWとうたってあるが、実際のレベルをスペアナでみると、13dBm(21mW)しか出ていなかった。ちなみにトランジスターは2N3904という小信号用高周波トランジスターを使用している。

また送信時には、LM386をオフするようにダイオードでスイッチが構成されている。このためフルQRSが可能だ。

この回路は:

などの特徴があり、この回路図の機能美は私の好みのMonetの水彩画のような淡いハーモニーを醸し出している。

セットとしてのまとめ

まず、オペレーションすると必要性を痛感するのが、サードトーンである。このハーモニーを壊さずにサイドトーンを組み込むことから始めた。

一番最初に考えたのは、LM386をカットしてしまう代わりに、トランジスターで正帰還ループを作り発振させることだった。

しかし、結論からいくとPIXIESでは反転入力タイプになっており、この方法は無理である。

そこで手元にあったCMOSゲートで発振器を作ってみた。4011を使いバッファー一段でヘッドフォンをドライブできる。この方式の良いところは受信時に電池を使わないことである。QRPのリグには最適。受信トーンはきれいではないが、圧電ブザーと比べればまともだ。SOPパッケージを使っては約1cm各、厚さ3mmぐらいに組み上げ、キーのジャックの下に組み込んでしまった。 回路図と以下に示す。

3Vのツエナーは不要のようにもみえるが、この方式が一番安定して動作している。回路図にはないが0.1uFのコンデンサーをVDD・GND間に忘れずに。

VXOはいろいろとトライしたが、最終的には上記の定数で16kHz程度の可変範囲が得られた。トーンは美しくQRHは確認できないレベルである。トリマーは22pFのものを利用し、実際にはジャンパーにより10pFをパラにいれることが出来る。使い込むと、羽の入りかたで1KHz直読ができるようになった。7040のクリスタルで7027から7043までQRVできる。RITのトリマーもついているので、自分の好みのトーンで受信できる。

PIXIE2の特徴として同調回路がないので、このままクリスタルをかえると10MHzにもQRVできる。私のバージョンはクリスタルの部分が同調回路ごと交換できるようになっていて、一応マルチバンド化に対応している。

使用感

まず、最初に3mのビニール線をつないだときには、やっぱりこんなおもちゃが動くはずがないと思った。実に静かで何も聞こえない。

回路動作でも述べたが、RFゲイン0のミキサー直接入力であることから、まともなアンテナが無いとお話にならない。

私は借り家住まいなので、テレビアンテナのポールに園芸用の竹パイプの太めのものを2段つないで、それを支柱にインバーテットVをあげた。給電部は5m。ただし、頂角が大きく取れており見た目は飛びそうである。針金アンテナで安いCATV用の同軸も込めて$30くらいでできた。

これをつなぐと、いやー聞こえる聞こえる。AM810がこんなにいい音で!!やはりAM波の通り抜けは予想以上でした。感度を落とすのが一番ですが試行錯誤の後、アンテナの芯線側に1000pFのカップリングコンをいれることにした。ただし、この方法では7MHzで約20%のパワーロスになる。送信はもともとQRPpだからあきらめてこの方法にしている。エレガントではないが入力側をワニグチクリップでグランドに落とすというのも効果があった。シュートしてもSNが良くなるので感度の低下はあまり気にならない。

この変更後は、混信もあまりなく良く聞こえるようになりました。
VK、JA、XE、VE、Wがなかなか良く聞こえます。リグとアンテナ完全自作で全部で一万円弱のシャック。これなら家内も怒らせずに無線を再開できます。ちなみにリグの写真の右下に移っているのは簡易キー(スイッチ)で、非常事態にはこれ単体でQSOができるようにしてあります。


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