2SC2120/2SA950 C級SEPPアンプの実験

Cosy MUTO, JH5ESM

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 この稿では,オーディオ用のコンプリメンタリペアトランジスタ2SC2120/2SA950を用いた7MHz C級SEPPアンプの実験データ(1991年実施)を紹介しています. この回路は7T9521“Komukai40”や,すでに現役を引退した7MHz DCトランシーバで用いられています.

 この実験で用いたトランジスタはPC=600[mW],IC max=0.8[A]のオーディオ出力用トランジスタで,fTは120 [MHz]です.
 7MHzで1[W]級の出力が得られるトランジスタを物色していたところ,値段の安さ(1本20円!)にひかれたのと,「トロイダル・コア活用百科」で パワーMOS FETを用いたコンプリメンタリプッシュプルアンプの実験があったのを思い出して試してみたものです.


 回路の設計は次のように行いました:

  1. 電源電圧 VCC及び出力電力 POを定める.
  2. 負荷抵抗を

    により求める(これは,電源電圧が2等分されて各トランジスタに印加されるためです).
  3. 入力インピーダンスは

    により求める.
 VCC=12[V],PO=1[W],VCEsat=1[V],hfe=17(=120MHz/7MHz)として計算すると

となりました.
 これより,入力側 1:4,出力側 1:4のトランスで50[Ω]系の線路に直接接続できることになります.
 バイアス用の抵抗は,C級アンプですので電源電圧の中点電位がベースに与えられればよく,ここでは入力インピーダンス Rinの15倍程度として値を設定しました.


 実験回路の回路図,周波数7[MHz]で測定した入出力特性及び高調波特性をそれぞれ図1,2,3に示します.

schematic
図1 回路図

Output characteristics on 7MHz
図2 入出力特性(@7[MHz])

2nd and 3rd harmonics
図3 高調波特性

 電力利得は最大で12[dB],1[W]出力時のコレクタ効率は約60[%]と,7[MHz]で使用するPAとしてはそこそこの能力を持っていることがわかります. fTが高ければもう少し高利得が望めるかもしれません.

 高調波成分の含有量ですが,プッシュプルアンプの特徴である偶数次高調波の抑圧がよく現れています. 入力16[dBm]以下では-40[dB],1[W]出力時でも-30[dB]をクリアしていますので,出力に接続するLPFは定K型1段で十分となります.

 面白い現象として,18[dBm]入力時(これは1[W]出力時に相当します)に,第3高調波が抑圧されています. この現象の理由は明らかではありませんが,1[W]出力を想定して設計した回路が,ちょうどこの点でその条件を満たしているのだろうと考えられます.


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