TiCK、CMOSキーヤー製作紹介

by JL1KRA

・究極のキーヤIC

これはQRPerが待ち望んでいた究極のエレクトリックキーヤICかもしれません。その名はTiCK(Tiny CMOS Keyer)。Tickは1チップ8ピンのDIPで、外付けパーツはキーイング用のトランジスタ回路TRに加えてはプッシュボタン1個、圧電ブザー1個のみです。これならばどんなQRP機にも組み込めます。石の値段は$5ですから好きなだけ買ってQRP機でもキーヤが標準装備になるでしょう。


・スピードはどうやって変えるの?

これまでエレクトリックキーヤを使っていてTiCKを初めて見る人は必ず疑問に思うはずです。TiCKではプッシュボタンを押し、インタラクティブにパドルからキーヤーに命令を送るところが斬新です。たとえば一番よく使うスピードの変更はというと、プッシュスイッチを軽く押すと、TiCKはS(・・・)を返して来ます。これでスピード設定モードに入り、パドルでDASH(−)を打ちつづけるとスピードが速くなり、反対のDOT(・)ではスピードが遅くなります。まどろっこしいようにも思えますがすぐ慣れます。たくさんある機能もこの方法で切り替えます。TiCKはICというよりはCPUなのです。

TiCKキーヤーのコマンドモード一覧
TiCKレスポンス (押し方) 設定機能
S ・・・ (軽くone push) スピード調節
T − (push hold then release)TUNE(Key Down)状態に
P ・−−・ (push holdで移行)パドルのdash/dot入れ替え。私などは左手親指でdot、人差指でdashを打つので、人様と入れ替えにいつも苦労していましたがこれで解消。
A ・− (push holdで移行)サイドトーンON/OFF
SK ・・・−・− (push holdで移行 )ストレートキー、パドルでストレートキー同様に打てます
M −− (push holdで移行)アイアンビック動作 ON/OFF
K −・− (push holdで移行)キーヤーデフォルトモードに戻る。
S ・・・ 最後にまたスピード設定モードへ戻ります

・キットの内容と作り方

Embedded Researchに送金するとキットをUPSのエクスプレスで送ってくれます。私の場合わずか10日で来ました。キットは8ページからなる丁寧なマニュアルと、基板、部品です。基板のシルク印刷はかすれていて文字が読めず、一部部品が印刷されてません。また実体図ではプッシュボタン圧電ブザ取り付け個所が逆になっているので、必ず回路図を見ながら作ること。30分で作れます。圧電ブザを取り付けるか、リグのサードトーンとして注入するかで作る回路が違うので、よく判断してから作りましょう。通電すると(・・)と言って自己主張?します。ICは$5、基板と部品の組み合わせは$16しますが、基板の質はあまりよくないので、これから買う方はICのみ注文することをお勧めします。78L05 は秋葉原で50円、キーイングトランジスタも2SC1815(QRPリグ以外はもう少し耐圧の高い2SC1479など)を選べば十分でしょう。私はNorCal38SpecialにTicKを乗せて10MHzにQRVしようとおもっています。

(写真)組みあがったTiCKキーヤー:9V電池がつながっていますが、78L05を外せば3Vでも動きます。遊んでいる線がキーイングラインです。プッシュボタンは軽めの物に変えるとフィーリングがよくなると思います。


・8044ABMの立場はどうなるか

これまで独壇場だったカーチス8044はどうなるのでしょうか。ICの定価は$19との話です。そしてキーヤとするにはVRポッドなど外付け部品が多くなるのでやや不利です。8044を使うキットはどれも$50以上はしますからそろそろ値下げしないと対抗できません。しかし、TiCKではCQ直後に全然違うスピードでコールバックされて、相手に速度を合わせるときはタイムラグが生じます。機会としては少ないかもしれませんが、ゆっくりCQを出してハイスピードで呼ばれたら(おお、いぢわるな相手!)、TiCKを調整しているあいだにQSYされてしまうあせりは感じるかも。好みの問題もありますが、多分8044ABMも残るでしょう。

文 JL1KRA