FLAGアンテナを建てる(JA7AO)

このコンテンツは JA7AO 松本OMが制作され、BLOGに公開されたFLAGアンテナの記事を、松本OMの許可のもとに転載させていただいたものです。

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 私(JA7AO)の160m用のアンテナはタワーシャントフィードを使用している。KT-25SにAFA-40,318-C,WARC用RDPをクリスマスツリー状にしているためキャパシティハットとしては充分で、それなりの動作にはほぼ満足しているが、 受信は水平系と違いノイズが強く受信専用アンテナは必須である。これまでに他人に聞こえて自分に聞こえないために落としたDXは多い。

 そのため色々な受信アンテナを試みている。1970年代には周辺が田圃だったので、稲刈り後はビバレージをEU方向に張らせてもらっていたので問題はなかった。しかしその後宅地造成が盛んになり田圃は潰される一方で 展開不可能になったので、スモールループ、CD-78L改造のロータリーダイポール、EWEなどを使用してみた。この中ではロータリーダイポールが良かったのだがアンテナエレベータの重量制限(当時は714-XXを上げていたので、)のため下ろしてしまった。

 EWEは評判が高かったので作ってみたが理屈がよく解らぬままやったので勘所がわからず、効果なしと判断してしまった。納得ゆくまで調整できずに終わったのは、病気で倒れて体が不自由になってしまったことが最大の理由ではある。しかし、その後EWEは効果的に動作させるにはアースが重要な要素だということで再現性が難しく、成功した人はそう多くはなかったようだ。

 そのEWEの欠点を補うために、アースの状態に左右されにくい改良型としてEA3VYホセが3角形にしてアースから浮かし、EWE同様の指向性を持つ小型アンテナを開発した。現在のペナント、フラッグ、K9AY,の原型である。K6SEはこのアンテナをEZNECでシミュレートして160m用として最適のサイズを割り出し実用化したのがペナントアンテナ、FLAGアンテナであり、その形状からそう命名されたものだ。

 K9AYはさらに改良し終端抵抗と給電点を地上で隣り合わせ、これを入れ替えることで指向性を反転させるアンテナを考案し、自分のコールサインをつけたアンテナを商品化している。実際には二組のループを交差し、反転させることで4方向の指向性を得ているがその構造上アースを使用するので、アースの状態に左右される欠点はあるとのことだ。

 今シーズン私が使用していた受信アンテナは地上高2メートルのフルサイズダイポールであるが長さが80メートルだからそこそこに使えていた。しかし異常気象の豪雪で積雪1.5メートルを越え、エレメントの約半分が雪の中となった。健康な体であれば雪中をスキーやカンジキをつけて張り直せるのだが、車椅子の身ではそうも行かず、別の受信アンテナを建設することを考えた。建てるにしても自分ではやれない訳だから、近所の人に頼んで手伝ってもらうことにした。だから形状はシンプルで説明しやすい「FLAG」に決めた。

 そのフラッグアンテナの形状はK6SEが Topband:REFのフオーラムで発表しているオリジナルデータにより作ったので次のようなものである。




 EWE一族のアンテナの指向性はビバレージとは反対で、終端抵抗を入れた方向と反対方向にFB比がでる。上の図の場合は給電点がフロントとなる。

 これを空中に展開するには色々のやり方があるだろうが私の場合は 10メートル長のグラスファイバーポール 「 W-GR-1000H 」を2本を4SQアンテナを作る場合の材料にしても良い、と思い購入してあったのでそれをマストとして使い、それにエレメントを沿わせることにした。

ポール10m2本を伸ばす。


 あらかじめ切り出していたワイヤーをポールに取り付けて建てる。
 真ん中は助監督のXYL


 ↓展長されたエレメント(左側)


完成した全景(クリックで大きくなります)
左のポールが給電側=USA方向になる


 工事が無事終わってご満悦の監督(JA7AO)


アンテナの性能は?
 早速シャックに引き込もうとしてケーブル端のMコネを掴んで飛び上がった。折からの降雪でスノーノイズが押し寄せ、帯電で凄い。コネクタの先端とスリーブでパチパチ放電してアークが飛んでいる。さすがにRXの外部受信端子に直接接続するのはためらわれた。フロントエンドがイカレたら困る。非設置系の長いエレメントのアンテナは帯電しやすいからどうしようもないのだから空電電磁波が行き過ぎるまで待つしかない。それから保護回路経由で接続して確認しよう、とはやる心を落ち着けてまずは一服。
スノーノイズが行き過ぎたところで受信開始、ゲイン不足ぎみなのかノイズは全くない。送信アンテナと受信レベルをあわせるためにはプリアンプが必要だ。K6SEはMP-1000で使用してプリアンプの必要性は感じなかった、と言っているが20デシほどの差を感じる。
送信アンテナで聞こえるところはすべて聞こえる。これは当たり前だが、まだプリアンプをいれていないから聞こえる大きさは違う。しかしFLAGはノイズが少ないからAFボリュームを上げれば充分実用にはなる。がしかしレベルあわせをしておかないとオペレートしにくい。FB比がどれくらいあるかはわからない。いずれは終端抵抗を調整して最適値を見つければ30デシはとれる、というシミュレーションの結果は出ている。

 使用してからまだ日は浅いから結論を報告するにはまだ早いが、ノイズフロアが低いのは有り難い。先日KV4FZがスポットされたが従来のアンテナではカサカサと信号の存在がやっと解る程度だったがフラッグで聞くとQSBの山では辛うじてやっと符号が解り谷になるとやはり解らない、という程度の差だったが差は認められた。しかし、ビバレージのように今まで聞こえてこなかった信号が聞こえるようになってまるで別世界になった、というような話ではないから過大な期待はできないが、Topband:REFでの使用レポートでは1/2λのビバレージとは同等だとレポートされているから私のFLAGもまだ改善の余地があるのだろう。

気になっていた点
・送信アンテナからは充分に隔離すること。
・家屋等からできるだけ離すこと。
・指向方向に電力柱が近接していること。
・オリジナルデータは地上高約2メートルとなっているが5メートル近くに上げてしまったのでシミュレーションと少し違う。終端抵抗値に影響あるのではないか? 等々検討課題も多いので継続して観察のこととします。取り敢えずの報告とする。

マッチングトランス成功!(JA7FUJ 青田)
 JA7AO HPに記載されている1:9の巻き方をまねて、4本巻き、シリーズにしたら約1:19になりそうです。 950オームの抵抗をつけZメーターで1.5MHzから3MHzくらいまでSWR1.2以下でした。 1:16になるのですかね?カットアンドトライでSWR1.0にするのは時間の問題です。
詳細追加 4本の電線をまとめてよじります。 これをコアに14回巻きます。 AとA’ BとB’ CとC’ DとD’と明記。 A’とB B’とC C’とD とつなぐ。 C’とD’間が50オ-ムでAとD’間が950オームです。 これだとSWR1.2位なので、AとA’間だけ3回多く巻くと1.5Mから2.5MHzまでバッチリ1.0でした。

FLAGアンテナを建てる 受信レポート(JA7AO)

フラグアンテナを上げてから約1ヶ月、受信してみての報告です。
建て上げるまでの経過は「FLAGアンテナを建てる」で述べているとおりだが、これが果たしてどんな結果だったか、1ヶ月間聞いてみてのレポートです。
一言でいうと、「意外と使える」受信アンテナだとの感触です。

受信アンテナへの思い入れは、各自の置かれている環境でそれぞれ違うので、私の実検レポートは、使用送信アンテナがタワーシャントなので、そのまま受信するとノイズが多く聞こえが悪いと言う不満を解消したいのが主眼でした。

従ってビバレージで聞いている人と同等の受信能力をこのアンテナに欲するのであれば残念ながら失望するでしょう。それがこのアンテナで叶うならば、誰も好きこのんで200mもの電線を引っ張らないでしょう。それを張れないためにああだこうだとガッチャめいている訳なのですから。

測定器や比較アンテナを使って定量的なデータを出してのレポートではなく受信した結果報告なのでその点お含み下さい。

当初の目論見はパターンはビバレージのように鋭くはなくブロードだろうと考え、真北を向けておけばNA/EU双方OKだろうと軽く考えていたのだが、NAの信号は全く入らず、送信アンテナでも良く聞こえるW8JI,K9DX,が聞こえるときにFLAGに切り替えてもまるで駄目、「こりゃなんだ?」何処か断線でもして居るんじゃないかとおもえるくらい効果はなかった。それでも日によって効果がある時もあった。KV4FZと皆さんがQSOしているときにこちらでは「何か出ているな」位なのがFLAGに切り替えたらコールサインが何とか確かめられる程度に上がり、349と言った状況だ。でも実用にはならないな、といささかがっかりした。

SWLはほとんどは宵の北米だけで朝のEUはあまり聞いていなかったが、2/10の朝6時頃からSWLをして聞き比べてみた。送信アンテナで聞こえるところは全て聞こえるので北米とはえらい違いです。

1824でG3FPQがCQを出していてその辺が超QRMでした。Gの信号は349くらい。
試しにFLAGに切り替えたら超QRMは静かになり、G3FPQがクリアに浮き上がって聞こえた。QSBも感ぜず、耳Sで569といったところ。コールするJAの信号は40デシも落ちたので聞きやすく、混変調も皆無。しばらく黙って聞いていた。JAが4-5局呼んでいたが、よく聞こえないのかタイミングのずれる局も居て、これは面白い。HI

呼んでいるのはJA4,JA5,JA6の局ばかりだったのでフト時計を見たら日の出10分過ぎていた。
送信アンテナで聞くとノイズばかりでGの信号は存在が分かる程度、FLAGに戻すと459-559でCQJAを出しているのがよく解る。聞こえなくなったのは日の出後30分経ってから。

こんなに明瞭にGを聞くのはマレなのでこの日が特異伝搬であるのかどうか、一応ローカルのJA7NI富樫さんに確かめたところ、ほぼ普通のコンデションで、別に良く聞こえていた訳ではない、とのことで、ならばこれは使えるぞ、と思った

2/28の朝、5時過ぎEUがパラパラと聞こえていた。それも弱くてCQを出しているのにコールレターがQSBでコピーできない場合が多い、それでFLAGに切り替えると殆ど確認出来た。OK1GU,UU2JQ,ES1QD,DF2PY,G3FPQ,等でいずれもCQを出していてJAからは誰もコールしなかった。クラスタにスポットされる前だからか。
その日のOM3DXの信号を録音したので聞いて下さい

こんな次第で、EUに良くてNAにはペケなのは何が原因だろうか、Gは350°北米は40°の方向、なので0°に向けたからFB比の関係?そんなに鋭いのか?まさか。
私のQTHから北米方向は山が迫っていて壁になっているので別の方向からの反射を聞いていた。元々40°の方向からは来ていなかった?まさか。
夜の北米方面からのパスと朝のEUからのパスのアングルの違い?。解らない。

雪が未だ1メートルもあるので足場が悪く、私では方向の変更及び終端抵抗の調整が今すぐは出来ないので雪が消えたらもう少し離れた場所にNA向けを張って、ゆっくり検討してみようと思っています。