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流星は地球の引力に引かれて大気圏に突入する際にその摩擦によって光を発しますが、その際、その周囲の空気をイオン化して電波を反射するする領域
を作ります。 地上で発射される電波がその領域に到達すると短時間ではありますがそこで反射が起り、あたかも電離層で反射した電波が遠方に届くように日常
その電波を聞くことの出来ない地域にまで到達するようになります。 これを流星反射エコーといいます。
この流星反射エコーを観測することによって流星を電波によって観測することが出来ます。
流星の電波観測に使う電波は50MHz付近が反射の効率が良いので、その電波源としては(1)FM放送、(2)京都大学が発射しているMUレーダー、
(3)アマチュア無線のビーコン電波があります。 各々の電波を使う観測法には、(1)FRO、(2)MRO、(3)HROという名前がついています。
このHRO受信機のキットは、流星反射観測用に毎日24時間発射されているアマチュア無線局、JA9YDB(国立福井工業高等専門学校、鯖江市、
53.750MHz、50W)の信号を受信するためのものです。
後でお話ししますが、この受信機の基本回路はアマチュア無線の50MHzはもとよりHF帯のSSB,CW用の受信機としても十分使用出来ますので楽しみ
にしてお読みください。
DC受信機というと何処かに「信頼性が低いのではないか」という心配が付いて回るようです。
たとえば、「感度が低いのではないか」、「帯域幅が広いではないか」、「周波数の安定性が悪いのではないか」というようなものです。
「感度が低い」というのは本当でしょうか。 今回の実験では、-133dBm(-20dBμ)の信号を検知することが出来ましたから決して「感度が低
い」ということはありません。
「帯域幅が広い」というのは何も加工しなければ本当です。 しかしオーディオフィルタで結構狭くすることが出来ます。
周波数の安定性は水晶発振器またはVXOを使えばなかなかのものです。
将来的なことになりますが、反射した電波の位相を観測してその電波がどの方向から飛んできたかという「位相計」への発展も考えに入れて受信機の中で位相
の回転が起る要素をなるべく小さくしたいここではという考えもあってダイレクトコンバージョン方式を採用しました。
回路図を第1図に示します。
RF増幅: ローノイズの受信機とするためにRF段は、GaAsFETの3SK129を使用しました。
ローカル発振、ミキサー: シグネティックス社のNE-612(フィリップ社のセカンドソースもあります)を使いました。
この受信機は50.750MHzのスポット受信機ですからローカル発振も水晶発振器です。 NE-612には発振器が内蔵されていて、3rdオーバトー
ンの発振をさせました。
AF増幅: LM386を使いました。 NE612の出力は平衡型で、それを平衡型のままLM386に入れることも可能ですが、音量調整が難しいので片
側をアースしました。
スピーカ: 外づけタイプです。(キットには入っていません) イヤホンも使えます。
電源: LM386用に9Vの電源を使用しました。 乾電池の006Pが使えます。 3SK129とNE612の電源用に5Vの定電圧レギュレータを使
いました。
第2図にプリント基板のパターンを、また第3図に部品取り付け図を示します。
ケースはタカチのSW-120を使用しました。加工図を第4図に示します。
(1) まずケースの穴あけ作業をしてください。 所定の位置にプリント基板を置き、穴位置を確認してプリント基板用の穴をあけます。このプリント基板
を固定するビスとして「皿ビス」を使いますので4個の穴の外側を皿状に削り取って下さい。
(2) ボリューム、アンテナコネクタ、イヤホンジャックの穴をあけます。
(3) もし、録音用のイヤホンジャック、外部電源コネクタ、LEDなどを設置したい場合はそれ用の穴をあけてください。
(4) プリント基板上の部品配置、配線を行ないます。
(5) 全体の仮配線をします。
(6) 調整(後で説明します)を行ないます。
(7) 調整が終ったらケース上に本格的な取り付けをしてください。 その場合、プリント基板の取り付けは第5図を参照してください。 また、電池
(006P)の下になる部分にスポンジを張り付けてください。
(8) もう一度調整をしてください。
(9) 蓋をかぶせて完成です。
(1) 電源を入れます。 イヤホンまたはスピーカを接続します。
(2) このままで配線に誤りがなければローカル発振は大丈夫だと思いますが念のため確認してください。
(3) 53.75MHzの信号が出せればそれを使いL1-3のコアを回し最大感度とします。
(4) 発振周波数調整用のトリマーを回して聞きやすい周波数に調整してください。
(5) 信号源が無い場合はアンテナを取り付け、雑音が最大になるようにコアの調整を行ないます。(出来るだけ50MHzの送信機をお持ちの方に協力し
てもらって53.750MHzの信号で調整するようにください)
MROで利用するMUレーダーの電波は非常に強いですがHRO用の電波はそれほど強いものではありません。 いや、むしろ弱いと言ったほうが当
たっていると思います。 したがって使用するアンテナはなるべくゲインの高いものを高い位置に設置して使用してください。 アンテナのゲインが小さいとエ
コーを聞くことが出来ないかもしれません。
アンテナの向きは送信所に近くの場合は上の方向に向けてください。 また、100km以上離れた場所では福井県鯖江市の方向にアンテナを向けてくださ
い。
流星の反射エコーが聞こえる場合はローカル発振の周波数によって異なりますが「ピ」または「ブ」、「ボ」というような音に聞こえます。 また、エコーが
数秒とか、10数秒連続して聞こえる「ロングエコー」が聞こえる場合もあります。
選択度(SSB): 第7図に示すように27mHのコイルと1μFのコンデンサによる並列共振回路をNE612の出力回路に入れる
ことによってSSBの受信には問題なくなります。 ただし、このフィルタを入れることによって約6dBの挿入損失が起きます。 この6dBを問題視する場
合にはトランジスタ1本のアンプを入れれば解決できます。
不要サイドバンド: SSBをDCで聞く場合、不要サイドバンドが反対側に反転した形で聞こえますが、これはDC受信機の宿命ですからあきらめてくださ
い。
CW用とする場合は、混信の少ない方のサイドバンド(ビートと言った方が良いかもしれない)を活用するという方法もありますが、トランシーバとする場合
は寺子屋シリーズ#218の「CWをステレオで聞こう」を使い、必要なサイドバンド側をいつも確認するという方法があります。
選択度(CW): 第7図の方式ではちょっと帯域幅が広いかもしれません。その場合はもう少ししっかりしたオーディオフィルタを付加する
ことになるでしょう。寺子屋シリーズ#163,164のCW用受動型フィルタが最適です。
HFで運用したい場合: NE612の7番ピンに取り付けた、68pFのコンデンサと07S25のコイルを取り外せば基本波の発振器にな
ります。 この場合、まだ確認はしていませんが、水晶のアース側にVXOコイルとバリコンを入れればVXOになるはずです。
また、水晶の代りにL.Cによる並列共振回路を取り付ければVFOになります。 しかし、いきなり受信周波数でVFOを使うのは3.5MHz以下の周波
数になるでしょう。
外づけVFOを使う: ミズホのVFOとか、プリミックス等で作ったVFOを取り付けることも可能です。
その場合は6番ピンにローカル信号を入れてやることになります。
シングルスーパー: 今まではDCに関しての話でしたが、もちろんスーパーへテロダイン受信機としても変身可能です。 その場合はローカ
ル発振周波数を受信周波数から中間周波数分だけずらしてください。 IF増幅を付ければ感度も一段と上がることでしょう。
AGC: 第1図の回路は本来の目的である流星反射の受信のため、AGCは付けてありませんが、アマチュア無線用の受信機としてはAGC
を付けたほうが良いと思います。
この受信機の目的は「流星反射の信号を受信する」ことです。 そして、その後の発展として干渉計受信機にしていきたいと考えていました。
干渉計受信機とは複数のアンテナから入る信号の位相の違いからその電波の到来する方向を検知するための受信機です。 ですから、受信機内での位相の変化
がなるべく起りにくく、入力と出力がなるべくリニア関係にある受信機に仕上げようと考えました。
そこで受信機の中で位相が変化しやすいであろう回路である、(1)ミキサーをなるべく減らすこと。 (2)フィルター類を極力減らすこと。 (3)
AGCを付けないこと。 に留意してみました。
そのためのDC受信機だったのです。
NE-612はアマチュアにとって非常に使い易いICでした。 ここで「でした…」ということばを使いましたのはごく最近になってこのICの入手 がほとんど出来なくなってしまったのです。 25台分は確保しましたがそれから先はSOPタイプという表面実装タイプに変更するしか手がありません。 早 く製造が再開されると良いのですが……。
<第1図>53.750MHz HRO受信用DC受信機全回路図
<第2図>プリント基板のパターン
<第3図>部品取り付け図
<第4図>ケース加工図
<第5図>プリント基板のケースへの取り付け
<第6図>QSTに載った回路(部分)
<第7図>SSB用オーディオフィルタ
<第8図>