地上波伝搬
波長が200m以上の中波(MF)による通信、たとえば中波AMラジオ放送などは地球の表面に沿って伝搬していく地表波を用いている。 この電波は大地や海面の影響を受けて伝搬し、その強度は地表面から離れるに従って急激に減衰し、地表から数波長離れるとほとんど消滅する。 またアンテナから放射された電波は地球の湾曲に沿って回折していき、この回折波の受信強度は受信アンテナ高が高いほど強くなる。 送受信点間が見通せない場合は、地表波と回折波との合成波を受信しているものと考える。
送受信点が見通し内にある場合は、受信電界は主に直接波と大地反射波の合成であり、周波数の影響は小さい。 受信点が見通し外にある場合は、1MHz以下の低い周波数(VLF〜MF)では、受信電界は地表波が主となる。
球面大地上の伝搬
図3に示すように送信点Tと受信点Rとが見通し距離内にある場合には、アンテナの高さ
が波長に比べて十分に高いとき、地表波の影響は無視して受信電界を求めることができる。
図3 見通し伝搬
直接波の電界強度を
とすると、反射波との合成電界
は
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ここで
は大地の反射係数である。 受信アンテナ高に対する受信電界強度の変化をハイトパターンと呼び、周期的に大小を繰り返す。 図4にハイトパターンの例を示す。 HF以下の周波数では波長が10m以上に及ぶので、現実的にこれらの関係はVHF以上で適用する。
図4 受信アンテナのハイトパターン
また
のときには
とし
は
と近似してよいので
となる。
のとき、受信電界強度はアンテナ高に比例するので、受信アンテナの高さは高いほど有利となる。
比較的近距離の送受信点間に山岳やビルなどの障害物がある場合には、地表波はほぼ平面と近似でき図5のように障害物に関して送受信側それぞれ大地での反射波による回折を考慮する必要がある。
図5 山岳回折