低高度衛星用アンテナ

 

仰角30度を付けて設置してあります。144MHzの輻射器は銅を使用しているため黒く写っています。

(私はグレードアップしてしまったのですが、これはJL3WSL局の現用アンテナです。)

 

実際に運用して分かった問題

地上波での通信に使えるように、144、430MHz両方とも垂直偏波で製作しました。

実際に運用してみると、お互いの回り込みがひどく、ダウンリンクで自分の電波が受信できない場合がある事が分かりました。

衛星をメインにして、地上波でも楽しめるのは良いのですが、リンクテストでダウン信号が正しく帰って来ているかどうか分からないのは、それなりにストレスになります。

衛星用アンテナとしては偏波面を直交させたアンテナが良いようです。(注2)

これから紹介するアンテナを直交させて製作しても駄目です。改めて別項で紹介します。

.アンテナの設計

(1)ブーム長は1m程度とする。

(2)144MHz=4エレメント、430MHz=6エレメントとする。

(3)マッチングは無調整50Ω直結型とする。

(4)不平衡−平衡変換にシュベルトップバランを使う。

(5)地上波での通信にも使用するため、144/430共、垂直偏波設置とする。

 

MMANA-GALで最適化した結果、次のようになりました。データファイルはここにあります

 

寸法図

 

 

帯域内SWR<1.2、GAIN=約9.5dBi(144)、約12dBi(430)となりました。F/B比は重視せずに最適化しています。

 

 

上の図が144Mhz、下が430MHzの指向特性です。同一の偏波面に配置した影響が上図のように指向性に出ています。

いずれも自由空間での計算値です。(注1)

 

アンテナを水平に設置し、仰角ローテーターを付けなくても、仰角40度までQSO可能な特性です。

仰角をつけてアンテナを設置すると、下図のようになります。

左が30度、右が45度、アンテナに仰角を付けた垂直面指向性です。

 

30度の時: 衛星が仰角5−65度の時QSO可能。実験しましたが、頭上でも結構いけます。

45度の時: 衛星が仰角10−85度の時QSO可能。

 

いずれもQSO可能とは経験値です。

アンテナは30度程度の仰角を付けて設置した方が、QSOできる確率が上がるようです。

2.材料の調達

使用した主な材料ですが、全てホームセンターで調達しました。

 

外径5mmのアルミパイプ: 4本

外径6mmのアルミパイプ: 3本

外径15mmのアルミ角パイプ: 1本

外径12mmのアルミ角パイプ: 1本

3.同軸ケーブルの準備

アンテナは平衡入出力ですので、不平衡の同軸ケーブルを接続する場合、少し工夫が入ります。

144MHzまでは市販のバラン、自作も可能ですが、430MHzとなると市販品もめったにありません。

構造、製作が容易な不平衡−平衡バランとしてシュベルトップバランを使用しました。

 

* シュベルトップバランの製作 *

 

4.アンテナの組み立て

(1)最初の寸法図のようにエレメントをカットします。

 

(2)ブームをつないで一本にします。ブーム端で支えますので、最低でもアンテナ長+300mmにします。(300+1241=1541mm)

  延長したら、12mm角パイプの余った部分を切り離し、全長1.541m〜1.6mにします。  

 

先端に12mm角パイプを追加して延長する

 

(3)ラジエーター以外のエレメントの固定

 

エレメントの中心に3mmのビスを通す穴をあけ、廻り止めとしてブーム幅+αをつぶしておく。

接着剤で補強してあります。

 

(4)ラジエーター部

   

 

小さいプラスチックケースをビスでブームに固定する。

ケースにエレメント用の穴をあけ、ラジエーターを半分に切ってその穴を通し、同軸に半田付けする。

エレメントが動かないようにエポキシ接着剤で固定する。

ラジエーターは銅パイプを使用すると、直接半田できて余分な工作が不要になります。ただし、完成後

塗装しておいた方が良いでしょう。

アルミパイプを使用する場合はパイプの先端に接続用圧着端子を圧着すれば半田可能になります。

5.アンテナの調整

利得、指向性を測定したい所ですが、測定器も設備もないのでSWR測定のみで我慢です。

SWRカーブで評価します。

 

1.組み立てが完了したら、なるべく周囲の影響を受けにくい場所に仮設置します。

2.144−146MHz、430−440MHzのSWRカーブを取ります。

3.調整するところが無いので、SWRが所定のカーブにならなければ、寸法をチェックするのみです。

 


注1)なぜ、自由空間なのか?

衛星は地表から遠く離れたところを通ります。

一方、遠方電磁界の指向特性は地上波の地面反射波の影響を入れて計算します。

地平線付近に衛星が居る場合は地面反射波の影響を受けるかもしれませんが、

それ以外では地面反射波は衛星に届きません。

従って、衛星に対するアンテナの指向性は自由空間の特性で評価すべきと考えます。


注2)アンテナの偏波面

衛星からの電波は偏波面が回転していますので、円偏波アンテナが理想と言われています。

使用レポートをみても、低軌道衛星では直線偏波アンテナとさほど差は無いようですが、QSBは低減できそうです。

水平偏波設置の方が地上波の混信を軽減できますので、衛星専用であれば水平偏波設置が良さそうです。

地上波での交信にも使用したいのであれば、垂直偏波設置になります。

 



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