28MHz短縮3エレ八木アンテナの製作
このアンテナは風と雨の対策を全く考慮していません。
くれぐれも戸外での永久設置はしないでください。ベランダ用仮設アンテナとして使用してください。
1.アンテナの設計
MMANA−GALを使用しました。シュミレーションしながら形を決めて行きます。
3mがベランダでハンドリングできる限界の長さですので、エレメント長を3mと決めます。
28MHzの1/2λは約5mですので、エレメントを3mに短縮するためにコイルを使いますが、挿入する位置によって性能が変わります。作り易さ、性能を天秤に掛けて、何度かシュミレーションしてセンターから約50cmの位置にしました。
センターパイプ長1m、両端にコイル、それぞれのコイルに1m長のパイプを繋ぐと全長3mのエレメントになります。(1mパイプ+コイル+1mパイプ+コイル+1mパイプ)
ベランダで使いますので、ブーム端保持でアンテナを支えます。ブーム長が長いと保持が難しくなるのでブーム長=2mにしました。各エレメント間隔=1mが出発点です。
MMANAに数値、適当なL値を入れて、L値のみで最適化することによって、L値を決めます。
こんな感じです。バンド設定は28.05MHz、目標は50ΩでSWR最良とします。
全てのLを同じにしてあるので、SWRはさほど落ちないと思いますが、この結果でLを決めます。何回か試行してL=1.9uHと決まりました。
Lが決まりましたので、「最適化」を何度か試行することでエレメント長と間隔を決める事が出来ます。
こんな感じで実行します。
ブーム長の最適値は2mを少し超えたところにありましたが、材料の有効利用と作り易さからブーム長は2mとしました。
最適化を何回か試行した結果です。
CW用にしてあります。この程度のアンテナではDXは厳しいので国内コンテスト周波数で最良のSWRになるようにしました。大事なアンテナ特性である利得、指向性は測定が難しいのでSWRだけを頼りにアンテナを製作します。
2.コイルの設計と製作
コイルの設計はMMANA−GALで可能です。直径26mmの塩ビパイプを仮ボビンにしました。
線径1.0の線を1.0のスペース巻きにして、1.9uHになるように巻数を計算すると、中途半端な巻数になりましたので、9回にするとL=1.935uHになります。
コイルの諸元は下図のようになりました。
塩ビパイプに薄いプラスティックシートを巻いておくと、コイルを巻き終わった後、パイプを抜き易くなります。
スペース巻にする為に、先に径0.9のテグスを巻いておきます。
6個分、54回+αを一度に巻き、4箇所をセメダインハイスーパー5で固定した後、パイプを抜きます。
切り離した後、測定器でインダクタンスを確認しておきます。
実際に作成したコイルのインダクタンスは1.93uHでしたので、エレメント長の最適値を再計算します。
下図がその結果です。
3.材料の調達
アンテナ強度、雨対策、重量等を考慮して構造を決定し、材料を決めますが、ベランダ設置の為、下記のような条件で構造、材料を決めました。
(1)外に突き出す構造物の規制がありますので、使用する時だけベランダに設置する。
(2)小雨程度は考慮するが雨対策はしない。
(3)風の強い時は使用しない。
(4)ブーム端で保持する構造とする。
(5)部品が外れて落下しないような構造になるよう心がける。
(6)耐入力電力=100W、とする。
(7)調整の手間を省くため、給電点インピーダンスを50Ωとする。ただしバランは入れる。
さて、使用した材料ですが、全てホームセンターで調達しました。
外径8mmのアルミパイプ: 9本
外径15mmのアルミ角パイプ: 2本
外径12mmのアルミ角パイプ: 1本
1mm厚のアルミ板
4mmビス、蝶ナット、普通のナット
4.アンテナの組み立て
(1)各部寸法(単位mm)
**各エレメント全長は20〜40mm長めに仕上げておき、調整時に延長しなくても済むようにする。**
(2)1〜3部分の詳細
ブームへのエレメントの取り付けは組み立て及び分解し易いように蝶ナットを使用します。
1.D1及びRFエレメントの固定方法
2.RAエレメントの固定方法
3.コイル部組み立て
4.ブーム組み立て方法
ブーム全長は取り付け部を考慮すると220+2000=2220となります。1mパイプ2本では不足ですので、下図のように12mmパイプで延長します。
1mパイプ2本をつなぐ
先端に12mm角パイプを追加して延長する
5.取り付け部の実際
私が使用している取り付け方法です。
これがベランダに設置してある土台です。アンテナ交換で14MHzから1200MHzまでQRV可能になっています。
4.アンテナの調整
利得、指向性を測定したい所ですが、測定器も設備もないのでSWR測定のみで我慢です。
SWRカーブで評価します。
コイルのL値を確定できれば、ほぼ調整は完了です。
高級な測定器を使って計っても、測定時のコイル周囲の状況等で誤差を0.1uH以下にするのは難しいものです。
SWRカーブを測定し、MMANA−GALの結果と比較して、L値を確定する方法を取ります。
この時、SWRが下っていなくても問題ありませんがSWR<5が望ましいでしょう。
1.組み立てが完了したら、なるべく周囲の影響を受けにくい場所に仮設置します。
2.28.0〜28.5MHzのSWRカーブを取ります。
3.スペアナ、ブリッジ、アナライザー等を使用し、アンテナの同調周波数を測定します。
4.測定した同調周波数を最適化周波数にして、L値を最適化します。この結果が実際のL値になります。
5.現在のエレメント寸法、決定したL値でMMANAーGALで計算し、SWRカーブを出します。
6.このSWRカーブと実測値のSWRカーブが似たり寄ったりであれば、L値は確定です。
7.確定したL値で全エレメントを最適化します。
8.得られたエレメント長に合わせます。
9.SWRカーブを測定して、設計値になっている事を確認します。
<実際の経過>
同調周波数を測定する事を途中で思いつき、その後、実測値と計算値が良く一致するようになって、一気に調整が進みました。
(1)センター部は1mのパイプを2つに切断し、コイルを取り付けて、コイル間を計測した所、1025(1034)mmになりましたので、再度寸法を訂正して最適化を実施。
(2)全てのエレメントを片側25mm、全長で50mm程度長めに先端部エレメントを切断してSWRを測定。
(3)28.0〜28.5MHzの全周波数でSWR=3.0以上。最良値は28.0でSWR=3.0でした。
(4)長すぎるエレメントを10mmずつ短縮していっても、最良値は28.0=1.7、28.2=1.3でこれ以上下がらず。
(5)何かおかしいので、簡易スペアナGigaSt+カップラーで同調点を測定したところ、27.75MHzでした。
(SWR/アンテナアナライザーでも測定できると思います。)
(6)長めのエレメント長を使い、最適化周波数=27.75として”L”のみをMMANA−GALで最適化。
(7)L=1.93となり、悪いSWRカーブとも一致しました。
(8)このLでエレメントの最適化を実施。
(9)エレメント長を短縮し、下記のような結果になりました。
アンテナの実測SWRカーブ
5.広帯域化
最初は28.0から28.6MHzをカバーするCW・SSB共用型で最適化を試行し始めたのですが、利得を確保するのが難しく、断念しました。利得は2エレフルサイズ八木アンテナ程度にしたかったのです。ダイポール+αの利得で我慢できれば広帯域CW・SSB共用型が可能です。
国内コンテスト周波数を含めた28.0〜28.15がSWR<1.5ですので、当初の目的は達成しました。短縮型のアンテナでは利得と帯域幅の確保が難しいのです。
コイルのコアに金属を使うとインダクタンスが減少しますので、アルミパイプをコイルの内側に固定してインダクタンスを小さくして28.5付近に同調させる事ができれば、SSB用として使えます。簡単に取り外しできる構造を検討しています。