TT2/J

有名な“Tuna Tin 2”QRP送信機の国産トランジスタ版

Cosy MUTO, JH5ESM
01 Jan., 2003

English

TT2J board


Introduction

この送信機はDoug DeMaw, W1FBがQST誌1976年5月号に発表したQRP送信機“Tuna Tin 2”の国産トランジスタ版です.
オリジナルは2N2222Aを用いていますが,ここでは東芝のオーディオドライバ用トランジスタ 2SC1959/2SC2120 を用いています.
いずれも20円前後で買える安価な石ですので,安心して飛ばせます(笑)
また水晶は特注品ではなく,パーツショップで大量に売っている銘板周波数7.000[MHz]のものを用い,トリマで7.003[MHz]に合わせ込んでいます.

More Infomation on TT2

回路と動作

回路図を図1に示します.
回路は至ってシンプルで,ピアースC-B発振回路,C級電力増幅回路及びキーイング回路で構成されています.

TT2J schematic
図1 TT2Jの回路図

発振回路は,図面上では教科書通りのピアースC-B回路ですが,ちょっと違います.
教科書に書かれたピアースC-Bの回路には,必ずコレクタ同調回路の共振周波数とコレクタ電流の関係図があって,電流ディップ点より若干低めに共振周波数を設定するよう記述されています.
しかしTT2の場合,コレクタ回路は一見共振回路に見えますが,その共振周波数は水晶の銘板周波数より遙かに低く設定されています.
オリジナルでは3.5[MHz]付近,このTT2/Jでもほぼ同様です.
実はコレクタ回路のインダクタは共振回路のLとしてではなくRFCとして機能させ,トランジスタ側から見たコレクタ負荷を単なる容量性負荷として扱っています.
Dougはコレクタ負荷容量の目的を「フィードバックのため」と書いていますが,それは誤りです. エミッタ接地回路ですのでコレクタ負荷容量はあくまでも「負荷」であり,フィードバックは水晶自身の役割になっています. NorcalのWeb等でも同じ誤りを見つけることができます.
発振周波数の調整は,水晶と直列に入れたトリマコンデンサで行います.
この回路定数で7006[kHz]付近まで動かせました.

電力増幅回路は簡単なC級増幅回路です.
コレクタ側回路は4:1広帯域トランスにして,コレクタ負荷を200Ωにしています.
当初はここもRFCで50Ω負荷にしていたのですが,負荷が重すぎ出力がとれないばかりかコレクタ効率も良くありませんでした.
ベース側には信号ラインに220Ωを挿入して発振回路の負荷を軽くし,終段に必要な励振電力を供給するようにしています.
このベース抵抗は値を大きくすると出力が低下しますので,適当に cut & try で決めて下さい.

キーイング回路はTT2/Jで取り入れたものです.
オリジナルの回路では回路のVCCラインを直接電鍵でon-offしていましたが,エレキーの使用やキージャックの絶縁に注意しなければなりません.
そこで,ここでは普通のエレキーやモノラルプラグ・ジャックが使えるようにしてあります.

アンテナ切替ですが,受信時に誤ってキーダウンしても送信機を壊さない(ダミーロードとして機能させる)こと,送信時に受信機入力をグラウンドに落として保護することを目的とした回路にしています.
ダミーロード内蔵ですので,受信機のキャリブレーションは簡単というおまけがつきました(^^;
それでも実運用時は受信機保護のためにATTを入れないとうまく使えないようです.

電源電圧13.5[V]での消費電流は
・発振回路 :36[mA]
・終段   :88[mA]
・キーイング:3[mA]
で,RF出力は0.4[W],終段のコレクタ効率は34[%]でした.


製作

Dougはツナの2号缶にこだわっているわけではなく「サーディンでもパイナップルでも」と書いていますが,Photo Galleryはツナとかキャットフードが多いようです.
私は猫を飼っているわけでもないし,2号缶の空きがなかったので手持ちのケースに入れることにしました.
タカチのMB-1というアルミケース(W70×D50×H40)で,2号缶よりコンパクトなところに基板も入れ込むプロジェクトです.
ケースが決まりましたので,これをベースに基板のレイアウトや部品配置を決めていきます.

回路が正常ならキーダウンしない限り電流が流れない回路構造になっていること,送受切替スイッチが「受信」になっていれば誤ってキーダウンしてもダミーロードに送信電力が吸収されることから,電源スイッチは設けませんでした.

基板は秋月電子の一番小さいユニバーサル基板を使いました(サンハヤトのICB-88も同サイズ).
そのままではケースに入りませんので,一番外側の部品穴の列でカットしてしまいます.

いきなり部品をさしてハンダ付けを始めると,このケースの場合,機構部品と干渉して収納できなくなります.
そこでケース加工をして各機構部品を仮止めしてから,部品同士が干渉しないように基板上の部品配置を決めて回路を作っていきます.
特に周波数微調用のトリマコンデンサは,調整用ドライバが入れられる位置に配置しなければ大変ですので,注意してください.

front view rear view
inside the enclosure inside the enclusure
図2  ケース収納の状況

謝辞  この送信機の製作にあたり,JG1RVN加藤さんより千石電商の水晶を提供いただきました. ここに記して謝意を表します.


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