●160m4SQアンテナ
160mではアンテナをどうするかは最重要課題である。
波長が長いから通常の家庭環境では半波長のDP,INV,LWや1/4波長スローパーや垂直がやっと上げられる位が標準的なところだろう。1/4波長の垂直と簡単に言うが、自立にせよステー式にせよ40mを垂直に建てるのは並大抵ではない。そこで短縮したり、タワーを利用する俗に言う「タワードライブ」(タワーシャントフィード略してTS)を使うことになる。
JA2XW Shunt feed

1/4スローパーやTSは上に載せている他のバンドのアンテナ(キャパシティハットとなる)に左右されるがうまく乗ればDXに対しては思いの外良く届く。しかし受信には苦労する。ノイズが多くて弱い信号の受信には泣かされる。他人がやっているDX局が聞こえない悲哀を感じる時が多い。そこで受信専用のアンテナが必要になる。 極めつけはビバレージを張ることだがこれには最低でも80mは必要で、1波長張るのが普通だ。EU向けと北米向けの2方向張るとすると、展開する場所も半端じゃあないから誰にも出来ることではない。

しかし、このバンドでビームアンテナも夢ではない。複数のバーチカルアンテナを位相給電するとビームが出ることはよく知られている。2本から始まり3本くらいまでならこれまでも使用例が多くあった。しかし、最近の流れは4SQが主流となってきた。4本のバーチカルアンテナをスクエア状に配置し、位相を手元で切り替えて4方向にビームを出す方法でこれだと送受信のネックを全てクリア出来る。(4SQの解説記事はCQ誌2002年1月号に「バーチカルの位相給電と7MHz4SQバーチカルアンテナ」として JA6ARJ  和田守 功氏が執筆されている) それにしても160mでアンテナを4本建てるとなれば簡単ではない。K9DXK1ZMの写真を見ると広大な敷地に思い切り自由に複数のバーチカルアンテナを建設しているようで恵まれた例だろう。だがJAでは少し事情が違う。聞くところよればJA1JRK,JH1HQT,JR1AIB,JA3KZR,JA4CUU,各局が4SQを使用しているそうであるが、それらは高いタワーを利用して、ワイヤーエレメントを4本吊り下げるスタイルのようである。図解すれば下のようになる。タワーは50m位の高さは必要だろう。

4SQ.gif
4本のエレメントの位相の組み合わせを替えるのには切替スイッチと位相補正回路をセットにしたものが米Comtek Systems,社Array Solutionsから売り出されている。 もちろん自作も可能で、JA6BJTの田中さんは75mでのノウハウを活かし160m用も製作しており、同じものをHL3IUA CHOIさんにも使用して貰っているとのこと。

JA6BJT1.jpg

(JA6BJT田中さん作成の切替器)

参考までにJA4CUU真鍋さんのサイトには、JA1HQT,JA1JRK,JA3KZR,及びご本人JA4CUU,各局の4SQの紹介が、またJQ1BVI平野さんのサイトにはJR1AIB,井上さんの4SQが紹介されている。それとW8JIトムのサイトには「K1UO to JA on 160m」としてイーストコーストで受信した谷田部さんと坂入さんのサウンドファイルがある。それぞれ興味深いものだ。


(以上の記事はJA7AO WEBLOG 2004/11の記事を転載したもの)   
 
4SQアンテナ建設例
実はこのアンテナをやろうと思ったきっかけはJA6BJT田中さんからの薦めからでした。 タワーシャントとINVで何とかやってきましたが昨今はハイパワー化が進み、大砲とスローパーで強引に持って行く人が多くなり、昔の貯金は減る一方でした。だからといって今更オーバーパワーも嫌だしそろそろ年貢の納め時かと思っていたのですが、田中さんは160m用の4SQ切り替え器を作り、JA1JRK,JA1HQT,HL3IUA,に使用して貰い良い結果となっているので同じ物を松本さんのために作ろうとと思っているから4SQをやってみないか、というのです。 4SQの良いことは判っていましたがタワーの高さと敷地の関係で私にはやれないもの、と思っていました。まして私はごらんの通りの身障者です。これから50メートル高のタワーは増設不可能です。 でもやっても見ないで不可能と思うのも口惜しくて私には無謀とも思えるこのシステムをやってみて経験してから引退を考えても、という気になりましたので田中さんに思い切ってお願いしました。 田中さんは返事した時点でもう装置一式を私のために作ってくれていたようでした。有り難いことです。昔一緒に160mDXをやった仲間というだけなのに、このような好意は身に染みました。装置はUSAのコムテックシステム社 http://www.comteksystems.com/ のものとほぼ同じですが使用部品は同社よりははるかに良いものを使っていました。
(↓装置の写真)
↓アンテナ方向切り替えSW (JA6BJT田中さん作成の切替器)
(JA6BJT田中さん作成の切替器)
自宅廻りのあまり広くない土地なのでスペーシングは完全な4/1波長の正方形ではありません。
(↓平面図)
タワーの低さをカバーするために引き下ろしのエレメントは10mhのグラスファイバーで受けるようにして垂直部分の高さをできるだけ稼ぎました。その部分を図面に書くと次のようになります。
(↓側面図)
アースはタワードライブの時にノーラジアルでバッチリマッチし飛びも良かったので今回もラジアル無しでやりました。単管も1m埋まっているので正式のアースとパラにしています。
(↓アースの廻り)
給電点は積雪を考えて少し地面より離しました 。 (下)はその部分の画像です。
これを4カ所に作りました。全景は(下)の通りですが垂直ではなく傾斜形で、これも4SQまがいの由縁です。
写真は2本しか写らなくて実際にはタワーの奥の方にもう2本建っています。 4カ所からケーブルを集めた場所に切り替え器があります。 切り替えスイッチをリグの上に置いて手元で切り替えられます。 方向は 1.EU向け 2.北米向け 3.ZL向け 4.東南アジア向けの4方向で、スイッチで簡単に切り替えられるのは気持ちよいものです。受信はビバレージとは較べられませんがスローパーやINVVよりノイズは遙かに少なくワッチが楽しくなります。 定量的にパターンを測定したりはしていませんが、実際に受信した感じやローカルを相手にテスト電波を出して方向を切り替えてレポートを貰うと予想以上にビームは利いていているようでした。 昨年の雪消えを待って設置し、後はエレメント調整を秋までかかってゆっくりやりました。 アンテナ間は 40メートルで畠中のため車椅子は使えないので健常者の20倍くらいの所要時間は要したと思います。 リニアはJRL-2000F(定格500W)を改造して1KWで使用していますが、アンテナ 1本当たりは約200W供給ですからメガワット級相手では、いくらビーム状に電波が出ると言っても勝ち目はありません。でもパイルも少し待てば何とかなります。ゆっくりゆっくりです。 色々のことを経験することが出来てJA6BJT田中さんには感謝しております。