ビバレージ・アンテナ |
ローバンド、特に160mの受信用アンテナとして最適なのはビバレージアンテナであることは良く知られています。このアンテナの構造は下図の如く極めてシンプルなものです。ただ一つの難点は広大な敷地を必要とすることです。その問題を如何にして解決するか、机上プランを如何にして実行に移すか、それが問題です。CQ誌2000年1月号に特集記事が掲載されましたが、その中の一人、JA4LXY藤田さんから解説記事を頂きました。 TNX OM |
ベヴァリッジアンテナについて JA4LXY 藤田富男 私が160mを本格的にやり始めたのは1984年の10月頃からで、最初はOMのQSOしている信号が全く聞こえず悔しい思いをしました。当時はロランもありそのロランをいかに避けることができるかが、明暗を分けたものでした。 多くのOMはすでにベヴァリッジアンテナ、ミニループなど指向性のあるアンテナを使用していたので、駆け出しの私が聞こえないのも当然でした。それから2年、160mを楽しむ為には絶対的な必需品と考え、ベヴァリッジアンテナをあげる決心をしたのです。 図-1は現在のものを示しますが、設置場所である山は、全てが他人の土地なので、いろいろと苦労しました。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の精神で取り組んだ結果で、その素晴らしい効果が得られたものと思っています。 さて、このベヴァリッジアンテナ、理論的にはジョンON4UNの解説でほぼ間違いないと思います。素晴らしいアンテナであることには間違いないのですが、日本では張りたくても張れないという方が殆どではないでしょうか。ここではジョンの解説を基に私の経験をまじえながら、完璧なものでなくても十分利用価値があるものができることを説明したいと思います。皆様に製作意欲が出てくれれば幸いです。 ・アンテナの長さと高さ 一般的に1~4波長といわれていますが、1.8/1.9MHzの場合は1波長でも160mもあり、気が遠くなります。私の場合は、山中に4面のベヴァリッジがありますが、0.8mm程度の細いエナメル線を使い、長いもので、160m、短いもので120m程度の長さしかありません。もっと長く張りたいのですが土地の制約上無理なのです。 さて、長さ的には長い方が良いのは判るのですが、逆に短くなったらどうなるのでしょう。私の経験から言いますと1.8/1.9MHzの場合、80mから160mの間はかなりの変化があり、80m長で、無いよりはまし、すなわち送信アンテナよりたまに良く聞こえる事もあると言う程度です。それが120mになると送信アンテナより良く聞こえる事が多くなり、まあまあ実用範囲内になります。160mあればもう完全な実用範囲内と考えてください。 私の場合、この長さ以上の経験はないのですが、このベヴァリッジで3.5/3.8Mhzを聞いた時の受信能力から、もう少し長い方が良い様な気がしています。しかし、あまり長すぎるとビーム範囲が狭くなり逆効果になりますので、2波長を限度に張れば良いと思います。 短いベヴァリッジでもいつか役に立つことがあります。私が開局3年目の事です。ベヴァリッジに興味を持ち、試験的に60mのものを張りました。短すぎたからでしょうか殆ど効果がなく、やはり駄目だったかと諦めていた矢先の事、NP4Aが1.8MHzのロングパスで入感したのです。送信アンテナでは今一了解度が良くなかったのですが、このベヴァリッジを使用する事により、了解度が上がり、交信できた記憶があります。こんなアンテナでも役にたつことがあるのですから、捨てたものではありません。 高さですが、私の場合は背が届く範囲の高さに引っかけているだけです。従って2m程度の高さになるでしょうか。樹木とは絶縁することなく適当に処理しています。5m程度の高さが良いと言う方もおられますが、確かにゲインは得られるものの1.8/1.9 MHzのベヴァリッジとしては限界高さに近いのであまり感心しません。又、ハード的にも大変なので、普通に人が邪魔にならない程度の高さで良いと思います。 |
給電点のインピーダンスは確かに高くそのまま50Ωの同軸ケーブルで給電すれば、マッチングをとった時に比べて、10dB~15dB程度ゲインは落ちます。でも少々感度不足でも良かったらそのまま給電してもかまいません。信号だけが落ちるのでは無く、ノイズも落ちますので、いわゆるS/Nは同じです。受信機の内部雑音との比較になりますので、基本的にノイズが内部雑音より十分高かったら問題無いと思います。 私は当初の5~6年間、マッチングをとらずに使用していました。同軸で300m引っ張っていることもあり、送信アンテナに35dBのアッテネータを入れて聞いている感じでした。ノイズレベルは受信機の内部雑音よりやや高いぐらいでしたので、やはり今思えば、極めて弱い信号を受信するときには苦しかった記憶があります。 現在は図-2に示すマッチングトランスを入れて使用しています。10dB程度の改善がみられ、送信アンテナと比べて25dB程度のマイナスになっていますが、この程度の低下は適当なアッテネータ効果になり良好な受信性能が得られています。 |
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・アンテナの終端 私の場合、アンテナの終端には約600Ω,1/2Wの金属皮膜抵抗を使用しています。アースは50cm程度アース棒を打ち込んであるだけで、極めて簡易にやっています。残念ながらこの終端抵抗値を変化させてどう変わるかという実験はやったことはないのですが、簡易アースだけにもう少し低い終端抵抗値の方が良いかもしれません。 ところで、この終端抵抗を付けなかった場合、即ちオープンの時どうなると思われますか。ロングワイヤーと同じでサイド方向からの信号が強くなると思われる方が多いと思いますが、ジョンの解説にも2方向ベヴァリッジとしてでていますが、実はビーム方向は同じなのです。F/B比、F/S比は悪くなりますが、見かけ上のゲインも殆ど変わりません。私は山の中に張っている関係上、腐った木が倒れてきたりして切れることが度々あります。その切れた位置が、給電部付近であればすぐ判るのですが、終端抵抗近くの場合気づかないことがあります。 ベヴァリッジの効果が大きいのは、サイド、バックからのノイズが軽減できるからでありこの効果が少なくなっても気づかないと言うのは恐ろしいことです。私自身の対策としては、中波のラジオ放送で信号確認しています。東西南北各方向1局の信号を記録しておき、この変化により異変に気づく様にしています。他の方法としてはシャックより接地抵抗を測る様にしても良いと思いますが、何らかの方法でチェックする習慣にしないと、イザという時に困る可能性が大です。 ・アンテナの接地 給電部の接地は終端部に比べて大変重要であると書かれていますがが、私は終端部と同じアースをおこなっています。山の頂上なので、アースは相当悪いと予想されますが、それなりの動作をしていますので、そんなに気にする必要はありません。只、良いアースをとることに越したことはない様です。 ・多素子ベヴァリッジ 私は以前、同相給電2素子ヴァリッジを製作したことがあります。その結果は、ゲインは5dB程度増加したものの、信号も、ノイズも同時に増加したので、魅力が感じられず、直ぐシングルエレメントに戻しました。実験であればいろんなデータをとりながら検証すればよいのでしょうが、実際のQSOをやりながらともなるとそうはいきません。へたな改造をしたばかりに逆効果になると大変です。 理論的には多素子になれば良くなるのは理解できるのですが、実験をやるとなれば草木のない広い平野が必要です。私の様に山の中でやるには相当力がいります。張ることもさる事ながら、その後のメンテナンスがもっと大変なので、現実的ではありません。どなたかバイタリティある方の実験を待ちたいと思います。 ・設置場所
・使用感 まずは、羨ましがるだけでなく、是非行動に移して頂きたいと思います。私のAF向けベヴァリッジアンテナの様に、必ずしも直線に張る必要はありません。要は自分の土地に合ったアンテナを張れば良いので、失敗を恐れず、まずはチャレンジする事が大切です。 必ず結果はついてくると思われますので、皆様の朗報をお持ちしています。 |