• ヘアピンマッチの原理はＬとＣによるマッチング回路です。ヘアピンマッチではＬとして、 コイルではなくヘアピン型をした導線を使うことからヘアピンマッチと呼ばれます。しか も、Ｃを外付けするのではなく、アンテナ自身にＣを持たせることで、外付け部品はＬ （ヘアピン）だけにするという巧妙なやり方でマッチング部を構成します。

• アンテナは容量性リアクタンスを持った状態で動作させるため、通常、エレメント長は、 使用周波数の計算上のエレメント長より少し短くします。

• 図の、a-a'部はアンテナ部を示しています。　b-b'部は同軸ケーブル接続点を示してい ます。Ｒはアンテナの持つ抵抗分を示しています。
  

• このタイプのＬＣマッチング回路（ヘアピンマッチ）では、回路の性質上、マッチング を取るためには、アンテナの抵抗は(５０Ωの同軸ケーブルで給電するとすれば）５０Ω以 下でなければならないという制限があります。

  図１

• ヘアピンマッチでは、５０Ωにマッチングを取るためには、アンテナの抵抗Ｒと容量性 リアクタンスＸｃの値はどのような値の組み合わせでもよいわけではありません。表１の値、 またはそれをグラフ化した、グラフ１の値でなければなりません。

  表１

  アンテナの持つ抵抗の大きさＲ　(Ω)	５０Ωにマッチングを取るために必要なアンテナの容量性リアクタンスＸｃ（Ω）	５０Ωにマッチングを取るために接続する誘導性リアクタンスＸｌ（Ω）	５０Ωにマッチングを取るために接続する、周波数別のインダクタンス（μＨ）
  			1.815MHz	3.515MHz	7.030MHz
  2.5	10.9	11.5	1.00	0.52	0.26
  5.0	15.0	16.7	1.46	0.76	0.38
  7.5	17.9	21.0	1.84	0.95	0.48
  10.0	20.0	25.0	2.19	1.13	0.57
  12.5	21.7	28.9	2.53	1.31	0.65
  15.0	22.9	32.7	2.87	1.48	0.74
  17.5	23.8	36.7	3.22	1.66	0.83
  20.0	24.5	40.8	3.58	1.85	0.92
  22.5	24.9	45.2	3.96	2.05	1.02
  25.0	25.0	50.0	4.38	2.26	1.13
  27.5	24.9	55.3	4.85	2.54	1.25
  30.0	24.5	61.2	5.37	2.77	1.39
  32.5	23.8	68.2	5.98	3.09	1.54
  35.0	22.9	76.4	6.70	3.46	1.73
  37.5	21.7	86.5	7.59	3.92	1.96
  40.0	20.0	100.0	8.79	4.58	2.26
  42.5	17.9	118.9	10.4	5.38	2.69
  45.0	15.0	150.0	13.2	6.79	3.40
  47.5	10.9	217.9	19.1	9.87	4.90

  グラフ１

  

  グラフ２

  

• 追補　スミスチャート（正確にはアドミッタンスチャート）を使いヘアピンマッチを説明するために、表１の Rと Xlをスミスチャート上に（正確にはアドミッタンスチャートにアドミッタンスとして）青い点でプロットしてみました。アンテナが青い線上の値を持つように作ってあれば、ヘアピン（Xl）を付けることでその値を矢印の向きに移動させ、グラフのＡ点の値(50Ω)にすることができ、マッチングが取れることがわかります。

  グラフ３

  

以下参考資料

インピーダンスＺとＳＷＲからＲとＸを求める式

Ｒ＝（（５０²＋Ｚ²）×ＳＷＲ） ／（５０（ＳＷＲ²＋１））
Ｘ＝sqrt（Ｚ²－Ｒ²）

＊sqrtはルートの意味です。

アンテナの抵抗Ｒから、マッチングに必要なアンテナの容量性リアクタンスＸｃを求める式

Ｘｃ＝sqrt(Ｒ(５０－Ｒ))

アンテナの抵抗Ｒと、アンテナの容量性リアクタンスＸｃからアンテナに接続する誘導性リア クタンスを求める式

Ｘｌ＝（Ｒ²＋Ｘｃ²）／Ｘｃ

使用周波数 f(MHz)から、接続するヘアピン（コイル）のインダクタンスを求める式

Ｌ（μＨ）＝Ｘｌ／２πｆ(MHz)

参考図1(ヘアピンマッチは③の変形。ヘアピンマッチでは図中のＣが１つになり、Ｃの式の分子 の「２」が「１」になる）)

出典　ハムのアンテナ技術　ＮＨＫ出版局　

参考図２　インダクタンスとヘアピンの寸法

出典　ＣＱ誌１９９６年２月号「ヘアピンマッチの設計と製作」ＪＡ１ＦＧＢ 宇佐美　勝　ＣＱ出版社

先端解放・先端短絡のヘアピン設計早見表

出典　ハムのアンテナ技術　　ＮＨＫ出版局