無線通信における電波伝搬

地上から発射された電波は地球表面およびその上層環境のため、周波数帯によって伝搬の形態が異なる。 一般的に地上波伝搬、対流圏伝搬、電離層伝搬に大別される。 図2に電波の伝搬様式を示す。 また電波伝搬の特性として次のようなことが挙げられる。

  1. 電波が大気中を伝搬するときには、雨や空気によって散乱、吸収が起こる。
  2. 空気層の密度の違いによって曲げられる。 途中の山や建物などの障害物によって遮られたり反射したりする。 また大地によっても反射される。
  3. 対流圏をとおりぬけた場合でも、さらに上層の電離層により反射、屈折がおこる。
  4. 移動通信では、基地局と移動局との間の伝搬経路中の障害物の影響を受け、マルチパスが発生しその結果フェージングが生じる。

伝搬の形態・要因とシステム、周波数などとの関係を表1に示す。

 

図2 電波の伝搬様式

 

システム
周波数
距離 伝搬要因 高度
地上波
放送

MF
HF
VHF,UHF

数10km〜数100km 地形 1km以下
移動
UHF 数100m〜数km
対流圏
地上
マイクロ波
(EHF)
数10km 大気屈折率
大地反射
降雨
15km以下
衛星
SHF,EHF 数km 降雨
電離層
放送
短波通信
HF以下
VHF以上は透過
数100km〜数1000km 電離層反射 数10km〜数100km

表1 電波伝搬の形態とシステムとの関係

 

地上10〜15kmは対流圏と呼ばれ、気象変化が激しく大気の密度、圧力、温度および湿度などによって電波の屈折率が変化する。 対流圏より上空で約50km程度の高さまでを成層圏といい、温度は-50℃〜0℃まで変化している。