ダイポールアンテナは構造が簡単で最も基本的なアンテナである。 一般的には半波長の長さのダイポールアンテナがHF帯を中心に使用されている。 給電点での入力インピーダンスは約73Ωで、75Ω系の同軸ケーブルで直接給電可能だが、送信系では特性インピーダンスが50Ωに統一されていることから、給電部にバランを挿入してインピーダンス変換を行い、50Ω系の同軸ケーブルで給電するのが一般的となっている。

VLF〜HF帯の各バンドにおいて、接地型アンテナが用いられている。 この場合の接地(グランド)は、電流帰路としての接地でありまた理論的には等電位面を形成するためのグランドである。

もっとも簡単な構造としてはダイポールアンテナの型側を接地しもう片側を放射器として使用するものである。 グランドにより原理的にはダイポールアンテナと同様の動作をするが、実際には接地抵抗による損失があるので利得の点では異なる。

MF帯の放送用としてはT型アンテナもしくは頂環容量装架型の接地アンテナが多用されている。 MFあるいはそれ以下の周波数では波長が長くなるが、建設の困難さから所定の長さが得られない。 そこで容量成分をエレメント先端に装架することにより実効高を得ることができる。

MFおよびHFでの通信を行っていた船舶では、垂直方向の高さをとることが困難なことから、エレメントを水平方向に曲げた逆L型アンテナが多用されていた。

また巡視船などでは船上での救難活動の妨げにならぬようHF帯において単純な垂直接地型アンテナ(ホイップアンテナ)が多用されている。

ダイポールアンテナや接地型のアンテナの共振帯域は一般的に狭くせいぜい数100kHz程度である。 したがってこのままでは複数の周波数において運用することは難しい。 そこで1本のアンテナで複数の周波数で運用可能なアンテナすなわち広帯域なアンテナの需要がある。 左図はコニカルアンテナと呼ばれるもので、HF帯を中心に多用されており、10MHz〜30MHz程度の周波数範囲を1本のアンテナでカバー可能である。

コニカルアンテナは送信も可能であるが、一般的には測定用の受信アンテナとして利用されていることが多い。

ダイポールアンテナや逆L型のような接地型アンテナの多くは、アンテナエレメントの長さ等により共振周波数を持ち、エレメント上に定在波が生じこれにより電波の放射を行う仕組みになっている。

これに対して、エレメント上には定在波でなく進行波が存在しこれにより電波を放射する仕組みのアンテナがある。 これを定在波型アンテナとよぶ。 定在波型アンテナの例としては、送信機と反対側の先端に終端抵抗を付け、接地したビバレージアンテナがあり、VLF〜LF帯を中心に使用されている。

またエレメントを菱形に構成し、先端を終端抵抗で短絡した形のロンビックアンテナがある。 HF帯の比較的低い周波数帯において国際通信等で多用されてきた。

ビバレージ、ロンビックアンテナはダイポールアンテナと比べ打上角が低いことから、電離層伝搬を利用した長距離通信に適したアンテナである。

 

左の写真は海上自衛隊えびの送信所(宮崎県)のアンテナサイトで対潜水艦通信用のVLFアンテナである。

8基の鉄塔が550m間隔で配置され、1650mの長さにおよぶ逆L型アンテナが展張されている。

 

左の写真および下の図は長崎県対馬に設置されているオメガ局のアンテナおよび整合用コイル室である。

10.2〜13.6kHzのVLF電波5波が使用され、送信電力は10kWである。 455mの塔型のアンテナに傘状のエレメント16条が展張されている。

 

 

神奈川県の三浦半島の先端にある神奈川県漁業無線局(みさきぎょぎょう)のHF帯用アンテナである。 水平、垂直ダイポール、多状逆L、折返しダイポールおよびT型アンテナ等を28面に展張し、1.6〜40MHzまでのHF帯全域をカバーしている。

神奈川県漁業無線局所属の漁船局は世界中にちらばっており、HF帯を使用して漁労に関する通信および一部公衆通信業務(電気通信業務)を行っている。

 

NTT 南有馬無線送信所 (旧 長崎無線電報局 送信所)のアンテナで、折返しダイポールアンテナ6面および逆Lアンテナ4面が展張され、MF〜HF帯において世界中の海上移動局(船舶)に強い電波を送っていた。

受信所は長崎県諫早市にあり、遠隔操作により送信所の送信機を制御し電波を発射していた。

長崎無線(JOS)の閉局に伴い現在はこのアンテナも撤去されている。

 

低周波帯で用いられる各種アンテナ

VLF〜HF帯ではその波長が数10m〜数1000mに及ぶので、必然的にアンテナも大きくなってしまう。 その為、これらのバンドでは線状アンテナが多用されてきた。 線状アンテナを中心に代表的なアンテナの例を示す。

 

 

● ダイポールアンテナ

 

 

● 接地型アンテナ

 

● 広帯域アンテナ

 

● 進行波型アンテナ

ビバレージアンテナ(進行波型アンテナ)

 

ロンビックアンテナ(進行波型アンテナ)


 

アンテナの実例

VLF〜HF帯で使用されているアンテナの実例を写真および図にて紹介しよう。